会社員が住宅ローン減税などの優遇を受けるための「年末調整」の手続きが簡単になる。会社に提出する金融機関からの証明書や申告書類が2020年に電子化され、自ら数字などを入力する必要がなくなる見込みだ。納税者の利便性を高めるとともに、企業の負担を軽くするねらいもある。
財務省と国税庁が、銀行や保険会社の業界団体などと協議に入っており、18年度の与党税制改正大綱に電子化の方針を盛り込む。国税庁や金融機関のシステム開発が必要で、20年末の年末調整から利用できるようになる見通しだ。
年末調整は、会社員の扶養家族が変わった場合の納税額の調整などの手続きを、社員に代わって会社がするもので、約4300万人が利用している。
ただ、借入残高に応じて税金が安くなる住宅ローン減税や、生命保険料を課税対象の所得から差し引く保険料控除を受けるには、金融機関から送られてくる証明書をもとに申告書に金額などを記入して、勤め先に提出する必要がある。
この証明書や申告書を電子化して、インターネット上で手続きできるようにする。国税庁が新たにつくる専用サイトで、金融機関の証明書に記載されたデータを自動的に取り込んで申告書を作成できるようにし、それを会社に送れば作業が完了するイメージだ。
企業にとっても事務作業の効率化につながる。従業員から送られてくる書類に間違いがないかチェックしたり、書類を保管したりする手間が省ける。そうしたコストを減らして企業の生産性を上げる議論をしている政府の規制改革推進会議が5月、年末調整の電子化を求める答申を出していた。(長崎潤一郎)