カシャッサを手に説明する村山ロベルトさん(右)=9月13日、東京都港区のブラジル大使館、岡田玄撮影
南米ブラジルで広く親しまれ、同国の連邦法で「国民飲料」と定められる蒸留酒カシャッサ。最近は原料や仕込みにこだわった高級品も現れ、欧米でも人気を集め始めた。日本にも、この味わいを広めたい――。同国大使館やブラジル好きの同好の士が動き始めた。
「まろやかだね」
初めて琥珀(こはく)色の酒をストレートで口に含んだ60人ほどの参加者は目を輝かせた。東京都港区のブラジル大使館で開かれた「カシャッサの日を祝う会」。ブラジル国会が定める「カシャッサの日」、9月13日に合わせて初めて開かれた。
カシャッサのアルコール度数は40度ほどあるが、この日提供されたものは口当たりが軟らかだった。たるで熟成させているためだ。
たるの種類ごとに香りが違い、イペーなど、ブラジル原産の木のたるで寝かせたものもある。会を企画した「カシャッサ・カウンシル・ジャパン」(CCJ)の麻生雅人さん(53)は「ブラジルをまるごと味わえるのがカシャッサです」と話す。CCJはブラジルやカシャッサ好きの日本人や日系人が集まり、昨年暮れから活動を始めた。
カシャッサはサトウキビの搾り汁が原料で、ピンガとも呼ばれる。搾り汁をそのまま醸造する点などで、廃糖蜜を使うラムとは区別される。ブラジル大使館によると、年間生産量は20億リットルにもなるとみられるが、99%がブラジル国内消費。これまでは本国でも「安酒」扱いをされ、ライムと砂糖を混ぜた「カイピリーニャ」などカクテルのベースとして飲まれてきた。
だが近年は、4万軒の生産者のほとんどを占める小規模醸造所から、原料や手仕事にこだわる醸造所が現れた。「プレミアム・カシャッサ」と呼ばれて注目され、ドイツや米国、フランスなど欧米への輸出が増えている。
しかし、日本での関心はいま一つ。対日輸出額は全体の1%にも満たない。大使館の担当者は「世界に比べ、日本ではまだ浸透していない。知名度向上に大使館も協力したい」とイベントを後押しした。
カシャッサを輸入する商社イマイの村山ロベルトさん(58)は日系2世。祖父母と父が戦前、熊本県から移民した。祖父は亡くなる直前までカシャッサを口にしていたという。「祖父にはふるさと九州の焼酎のような感じだったのかもしれない」と懐かしむ。「カシャッサはブラジルの歴史を飲むようなもの。長い歴史で育まれた手仕事の酒を、日本の人にもぜひ味わってもらいたい」と話した。(岡田玄)