無資格検査のイメージ
日産自動車が無資格者に車を検査させた問題は、不正が発覚して西川(さいかわ)広人社長が是正を公言した後も、大半の工場で続いていた。日本を代表するグローバル企業で明らかになった深刻な経営の機能不全。西川氏は、不正の背景について「現場」の不手際を強調したが、経営陣の責任問題への発展は避けられない。
日産、全車両の出荷停止 国の不正指摘後も無資格検査
「言い訳のしようがない」「現場のコントロールが課題だ」
西川氏は19日夜に横浜市の本社で開いた記者会見で、自身が謝罪した後も続いた不正を、厳しい表情で説明した。同じ場で今月2日夜に、「9月20日以降は認定した検査員が100%行うようになった」と語ったばかりだった。
国から委託された形で、車両の最終チェックにあたる「完成検査」での不正。西川氏は「常態化し、組織的な取り組みだった」と認めた。ただ、自身の進退を含めた経営責任について問われると、「生産を正常に戻し、信頼を取り戻し、会社を従来の成長に戻すのが一義的な役割だ」として、答えを避けた。
代わりに西川氏が、不正が繰り返された背景として強調したのが、「現場」の不手際だ。「工場長から部長、課長から係長へと指揮命令が伝わっていたが、その過程で課長と係長のコミュニケーションのギャップが大きかった」と話した。
ただ、国土交通省の立ち入り検査があり、西川氏が記者会見で謝罪してからは、不正は社内外の誰の目にも明らかだったはずだ。それなのに、国内で完成車をつくる組み立て工場全6工場のうち4工場で漫然と不正が続いていた事態は、現場の不手際だけでは説明が難しい。
4工場のうちの一つ、日産車体湘南工場(神奈川県平塚市)では、指導的立場の従業員が無資格者に対し、「作業が遅れているからやってくれ」という内容の指示をしていたことがわかっている。19日に新たに判明した3工場では、国交省に届け出が必要な工場の生産ラインを勝手に変更していたことも判明した。法令軽視の姿勢は根深い。
不正が起きたラインでは完成検査とは別に、日産独自の商品検査も実施している。独自検査は商品の競争力に直結する「1丁目1番地」。そこで働く従業員の資格が混乱したままで、ずさんな検査が横行していたことになり、商品の信頼性にも傷がつきかねない。
国交省や日産社内でも、人手不…