学生スポーツのシンポジウムに向けて開かれた事前の勉強会(ユニサカ提供)
学生自らが学生スポーツの課題と将来を考える「大学スポーツ国際デー記念シンポジウム」(朝日新聞社など後援)が23日、東京都千代田区の連合会館で開かれる。スポーツ庁が2018年度中に創設を目指す「日本版NCAA」の姿を当事者の学生たちが議論する場だ。
シンポジウムを前に、5日と9日には勉強会が都内で開かれた。1回目はスポーツ庁調査官の渡辺伊織さんと同志社大の川井圭司教授が、日本版NCAA構想やコンプライアンスについて講演。2回目はサッカー元日本代表で現在は東大コーチも務める岩政大樹さんと、順天堂大の小笠原悦子教授が、大学スポーツの意義や女性スポーツの視点から講演した。
1回目は一般学生、2回目は体育会に所属する学生が、それぞれ約30人参加。両日とも講演と討論を合わせると5時間に及んだ。
■勉強会は議論白熱
シンポジウムを運営する学生グループ「ユニサカ」のメンバーで、勉強会を担当した東大工学部4年の俣野泰佑さんは「NCAAに対する理解が不十分なのは予想通り。しかし、大学スポーツへの関心は高く、白熱した議論でシンポジウムに向けていい予習ができた」と話す。
ユニサカは慶大の鈴木寛教授のゼミが核となっている。実際の活動を通じて社会問題を学ぶゼミの狙いから、サッカーの早慶定期戦を満員にすることを目指す「早慶クラシコプロジェクト」を昨年2月に立ち上げたのがきっかけ。一般社団法人の認証も受けている。
1年半かけたプロジェクトは、両校のサッカー部員や他大学の学生を含めて30人以上が関わった。
インターネットTVの生中継や歌手AIさんによるハーフタイムショー、クラウドファンディングでの資金集めやスポンサーとの交渉、ホームページの運営、ロゴマークの作成など、事業は多岐にわたった。
7月15日の試合は、観客が前年比2千人増の1万4500人。満員(2万6千人)の目標は届かなかった。
■慶大ゼミ核にプロジェクトも
ユニサカの理事で慶大経済学部3年の原田圭さんは「学生が自らの手で学生スポーツの魅力を増やし、価値をあげる。そうした取り組みの一歩ができたと思う」と振り返った。
シンポジウムでは、このユニサカのプロジェクトを含む学生による活動の事例報告に続き、事前勉強会での議論からでてきたテーマで討論する予定だ。
日本版NCAA構想は米国の大学スポーツを統括する全米大学体育協会を参考に、昨年度から検討が始まった。今年度中にスポーツ庁が計画をまとめる。
シンポジウムの内容は、学生からの提言としてまとめる。シンポ主催者の全国大学体育連合も全国の学生に1万人規模のアンケートを行い、その結果も、スポーツ庁の構想に反映される予定だ。