「論戦」はかみあっているか
22日投開票の衆院選でほとんどの政党が公約に盛り込んでいる「憲法」と「教育無償化」。当初は大きな論点になるとみられたテーマだが、いま一つかみ合った論戦になっていない。そんな傾向が、朝日新聞社と東京大学・谷口将紀研究室が全候補者を対象に実施した調査(回答率97%)で明らかになった。
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まずは「憲法」。調査では「重視する政策」について、「その他」を含む16の選択肢から三つまで選んでもらった。その結果、護憲派の共産党の90%、社民党の95%が重視する政策と位置づけた。両党と選挙協力する立憲民主党は32%だった。
一方、自民党で憲法を選んだ候補は8%にとどまった。改憲に前向きな日本維新の会(8%)と希望の党(7%)も軒並み少なく、代わりに「外交・安保」(自民76%)や「教育・子育て」(維新90%、希望65%)などを挙げる人が多かった。公明で憲法を選んだ人はいなかった。
安倍晋三首相(自民党総裁)が憲法9条に自衛隊を明記する案を提起するなど、改憲テーマが具体化する中での衆院選。しかし、改憲を目指す勢力はさほど重視しておらず、改憲を阻止したい勢力が声高に唱える――という、かみ合わない構図となっている。
次に「教育無償化」。首相は衆院を解散する理由として、2019年10月に消費税率を10%に上げた増収分を教育無償化に充てる方針の信を問うとした。ただ、教育無償化そのものについては、調査では各党がほぼ同じ方向を向いている様子が浮き彫りになった。
幼稚園・保育所から大学までの教育無償化について賛否を聞いたところ、野党で賛成寄りの姿勢を示した人は希望(79%)、共産(98%)、立憲(91%)、維新(98%)、社民(100%)。与党でも自民の67%、公明の84%が賛成寄りで、与野党ともにほぼ「賛成一色」だった。
むしろ調査からは、消費増税について与野党の意見が割れ、争点化している様子が浮かんだ。消費税率の10%引き上げへの賛否では、9割以上が賛成寄りの自民、公明に対し、希望、維新、立憲、共産、社民の大多数が反対寄りの姿勢を示す構図になっている。(山岸一生)