川が氾濫(はんらん)し、浸水した住宅地=23日午前8時24分、和歌山県紀の川市、朝日新聞社ヘリから、加藤諒撮影
超大型の台風21号は22日午後11時ごろ、和歌山県・潮岬の東南東約130キロの海上を通過。近畿地方の広い範囲に強い雨をもたらし、局地的には1時間に80ミリ以上の猛烈な雨が降った。各地で河川の氾濫(はんらん)や土砂災害が相次ぎ、大阪府で1人が死亡、和歌山県で呼びかけに応じない男性1人が見つかったほか、兵庫や大阪、高知など近畿と四国の7府県で計約80人が重軽傷を負った。
気象庁によると、23日未明までの24時間降水量は、大阪府堺市で207ミリ、和歌山県紀の川市で275ミリに達した。京都府舞鶴市では朝までに312ミリに達するなど、近畿各地で観測史上最大を記録した。
大阪府岸和田市では22日、山から崩れた土砂で川がせき止められ、あふれた水で府道が冠水。23日朝には沈んでいた軽乗用車内から和泉市のアルバイト女性(68)が見つかり、死亡が確認された。
和歌山県紀の川市では22日夜、民家に土砂が流れ込み、夫婦とみられる男女が巻き込まれた。70代女性は救助されたが、80代男性は23日午前10時過ぎにがれきに挟まった状態で見つかり、呼びかけに応じないという。
富山市の富山港では23日未明、トーゴ船籍の貨物船「REAL(リアル)」(1798トン)の係留ロープが切れ、防波堤の消波ブロックに乗り上げた。いずれもロシア国籍の乗組員19人にけがはなかったが、エンジンルームが浸水し、油の流出が確認されたという。
気象庁によると、台風は23日午前3時ごろ、静岡県御前崎市付近に上陸した。午前8時時点で、茨城県日立市付近を時速65キロで北東に進んでいる。中心気圧は965ヘクトパスカル、中心付近の最大風速は30メートル。昼過ぎに東北の太平洋側に抜け、24日朝には北海道の東で温帯低気圧に変わるとみられる。
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東海道新幹線は22日午後10時ごろ、岐阜羽島(岐阜県)―米原(滋賀県)の上下線で停電が発生。区間内で「のぞみ」の下り2本(乗客計約1200人)が立ち往生したほか、後続の列車が客を乗せたまま駅などで停車。停電は23日午前4時半に復旧したが、3本が運休、42本が最大約8時間遅れ、約2万4千人に影響した。
23日朝からは、近畿地方の在来線を中心にダイヤが大きく乱れた。JR西日本は、京阪神を発着する160本以上の特急の運休を決定。阪和線や学研都市線などで始発から午後3時ごろまで運転を見合わせたり、大阪環状線など都市部の路線で運転本数を減らしたりした。このため、JR大阪駅などでは通勤客らで混雑した。