東芝の臨時株主総会でセキュリティーチェックを受けて会場に入る株主ら=24日午前、千葉市美浜区、川村直子撮影
東芝は24日、臨時株主総会を開いた。半導体子会社「東芝メモリ」の売却を提案し、3分の2以上の賛成で承認された。売却益で来年3月末までに債務超過を脱し、株式上場廃止を回避する計画だ。売却への残る課題は、各国の独占禁止法審査の通過と、売却に反対する協業先の米半導体大手ウエスタンデジタル(WD)との和解となる。
総会は午前10時に始まり、午後0時52分に終わった。綱川智社長の続投を含む取締役10人の選任と、6月の定時株主総会で報告できなかった2017年3月期決算も過半数の賛成で承認された。
冒頭で綱川社長は、決算の報告の遅れなどを踏まえて「ご心配をおかけし、心からおわび申し上げます」と謝罪し、登壇する役員全員で頭を下げた。
株主からは、東芝メモリの売却が来年3月末までに完了しない場合の対応を問われた。綱川氏は「いろいろと考えないといけないのは承知している」と述べたが、具体策は「決まっていない」と説明を避けた。
決算をめぐっては、PwCあらた監査法人が米国の原発事業で生じた損失に関して「16年3月期に計上すべきだった」と疑義を突きつけている。株主から「両方の意見を聞くべきだ」としてあらた監査法人の出席を求める動議も出されたが、否決された。
東芝は米国の原発事業で巨額の損失を出し、負債が資産を上回る債務超過になり、営業利益の9割を稼ぐ東芝メモリの売却を迫られた。売却先決定の先送りを繰り返した末に、9月下旬に米投資ファンドのベインキャピタルや韓国半導体大手SKハイニックスなどの「日米韓連合」に2兆円で売ると決定。売却後の東芝は、水道の処理施設や原発の廃炉といったインフラ関連事業が中心となり、「稼ぐ力」の向上が課題になる。
会場には朝から株主が続々とつめかけた。東京都江東区の男性(75)は「激励に来た。日本のものづくりを支えた東芝の復活に期待している」。元東芝社員だという東京都杉並区の男性(57)は「政府の意向を無視できなかったとはいえ、もう少し早く東芝メモリの売却先を決定してほしかった。綱川社長らのリーダーシップには不信感がある」と述べた。