国税当局がタックスヘイブン対策税制を適用し、海外子会社の所得を国内本社に算入して約12億円を追徴課税したのは違法として、大手自動車部品メーカー「デンソー」(愛知県)が国に課税処分の取り消しを求めた訴訟の判決が24日、最高裁第三小法廷であった。山崎敏充裁判長は課税を違法と判断し、デンソー敗訴の二審判決を破棄。国を敗訴として処分を取り消した一審判決が確定した。
判決によると、名古屋国税局は2010年、シンガポールのデンソー子会社の所得に税制を適用した。09年3月期までの2年間で約114億円の申告漏れを指摘し、約12億円を追徴課税した。
この税制は、法人税率が低い海外へ所得を移すことで、税負担を免れようとするのを防ぐ仕組み。子会社の主な事業が、国内でもできる「株式の保有」なら適用される一方、ほかに事業実態があるなど一定の条件を満たせば除外される。裁判では、主な事業をどう評価するかが焦点だった。
山崎裁判長は、主な事業の判断には、収入や所得、人員などの状況を総合的に考慮する必要があると指摘。デンソー子会社は物流の改善業務が収入の8割以上を占めるなどとし、主な事業を「相当な規模と実態がある地域統括業務」と判断し、課税を違法とした。
14年9月の一審・名古屋地裁判決は「地域統括業務」が主な事業と認めて処分を取り消したが、昨年2月の二審・名古屋高裁判決は「地域統括業務は株式の保有業務の一つに過ぎず、独立した事業とは認められない」と判断していた。
デンソーは「当社主張の正当性が認められた」、名古屋国税局は「裁判所の判断を謙虚に受け止め、今後も適正な課税に努めたい」とのコメントを出した。
デンソーはこの子会社を巡り、ほかにも約138億円の申告漏れの指摘を受け、約61億円を追徴課税されている。同様に処分取り消しを求めた裁判で国と争っており、今月18日に名古屋高裁でデンソーを勝訴とする判決が出ている。(岡本玄)