少年犯罪の厳罰化を求める声が強まる中、法制審議会で少年法の適用年齢を20歳未満から18歳未満に引き下げる検討が進んでいる。非行少年たちは社会の変化とともにどのように変わってきたのか。家庭裁判所の調査官になって37年、彼らに向き合い、寄り添ってきた伊藤由紀夫さんに聞いた。
――最近の少年たちの気になる特徴はどんなところですか。
「昔に比べて、孤独が深いと感じます。アニメ『エヴァンゲリオン』のようです。主人公の少年はいきなり汎(はん)用人型決戦兵器のコックピットに座らされて闘わされます。最近の子どもたちも、大人の社会ではグローバル経済などと言っているけれど、よくわからないものに踊らされ、ひとりコックピットに押し込まれ闘わされているという感覚ではないでしょうか」
「昔は孤独でも、不良の文化に入れましたが、いまはそんな場所さえ減りました。私が調査官になった1980年ごろは、大規模な集団非行が特徴でした。暴走族が改造バイク200台で走るのは珍しくありませんでした。そこには先輩後輩文化がありました。昨今は5台以上はめったに見かけません。共犯事件も減っています」
――子どもたちの非行の内容は変化しているのでしょうか。
「全体としては、万引きや自転車盗などの窃盗・横領が5割、交通事故や交通事犯が3割、けんかや傷害などの暴力事件が1割で、およその割合は昔から変わりません。最近は、ちかんや盗撮などのわいせつ系が目立ちます。スマホの普及やネット社会の広がりの影響でしょう。非行少年はうまくいかないことやおもしろくないことがあると、投げやりになって窃盗や無免許運転など行動化します。悪いことだとわかっていても抑えられない。そういう未熟さは今も昔も変わりません」
「共働きが普通になり、家族もそれぞれが孤立して、学校にも居場所がなくなっています。昔は反社会的・不良顕示型の少年が多かったですが、最近は非社会的・対人関係回避型が増え、不登校や引きこもり、自殺念慮が目立ちます。『一昨日から何も食べていない』という子どもによく会います。昼夜逆転の生活で親と顔を合わせず、家の冷蔵庫に何もない状態です。小学校高学年から大人と一緒に食事をしたことがない子どもも珍しくありません」
――子どもを取り巻く環境が変…