ムガベ氏=AP
アフリカ南部ジンバブエのムガベ大統領(93)が21日、辞任した。反乱を起こした軍や「身内」の与党から退陣を迫られ、国を独立に導いた「英雄」は権力の座から引きずり下ろされた。盤石の支持基盤を持っていたかに見えるムガベ氏の辞任が、他のアフリカの長期政権国家に与える影響が注目される。
新大統領には、前副大統領のムナンガグワ氏(75)が24日に就任する。ムナンガグワ氏は6日にムガベ氏から副大統領職を解任された後、身の安全を確保するために国外に避難していたが、22日に帰国した。一時は失業率90%に達したとされ、破綻(はたん)した経済の立て直しが最優先課題となる。
ただ、ムナンガグワ氏はムガベ氏側近として長年仕え、政権に批判的な人々に対する弾圧にも関わったとされる。そのため、新政権でも「強権支配は続く」と危惧する声もある。
今回、軍が反乱を起こした背景には、ムガベ氏の後継争いがある。ムガベ氏は後継の最有力候補だったムナンガグワ氏を解任し、自分の妻のグレース氏(52)を最有力候補にした。グレース氏は国民が危機的な経済状況に苦しむ中、高価な宝石や靴を頻繁に購入し、国民の不興を買っている。
ムナンガグワ氏を支持する軍幹部は同氏失脚に危機感を募らせ、15日に国営放送局を占拠し、首都ハラレ中心部で軍を展開。政権中枢を掌握し、ムガベ氏を自宅軟禁状態にした。
一方、ムガベ氏が大統領辞任に追い込まれたことは、アフリカの他の長期政権国家にも波及する可能性がある。赤道ギニアのヌゲマ大統領など、アフリカには30年以上に及ぶ長期政権の国が複数ある。同志社大学の峯陽一教授(アフリカ地域研究)は「他の独裁体制国家にとって、ムガベ氏退陣は大きな脅威」と指摘した。(ハラレ=石原孝)