球場の外周を走り込むヤクルトの選手たち。とことん体力を強化するメニューが組まれている=松山市の坊っちゃんスタジアム
今季プロ野球のセ・パ両リーグの最下位に沈んだ2球団が、新監督の下で対照的な再スタートを切った。ロッテは大リーグでも4季プレー経験のある井口資仁監督(42)が、実戦重視の米国流を取り入れ、新風を吹かせた。一方、4年ぶりの再登板となるヤクルトの小川淳司監督(60)は「昭和の野球」に原点回帰。秋季キャンプでは、ひたすら体力強化に努める過酷なメニューで選手を鍛えた。
2~21日の松山市での秋季キャンプで、ヤクルトは練習方針を大転換した。自主性を重んじるカラーから、強制で体をいじめ抜く練習へ。休日は2日だけ。主力の山田も参加した。
実戦はなく、午前9時から午後7時ごろまで基本の反復練習が続いた。小川監督は「自主性が大事な時期もあるが、今のチームに必要なのは質より量。我々が現役の頃の、昭和の野球だね」と狙いを明かした。
かつてのチームリーダーで、5季ぶりに復帰した宮本ヘッドコーチの存在が大きい。野手の練習なら、これまでは打撃と守備走塁を並行して進めることが多かったが、午前は守備、午後は打撃と明確に分けた。道具を交換するなどの時間のロスをなくし、より集中させたいという宮本ヘッドの発案だ。最初の数日で、選手も裏方も「体がパンパン」と悲鳴を上げていた。
野手の練習は、高校野球のようだった。6組に分かれ、フリー打撃の他、各種のティー打撃、重りを持っての強化運動など6種目を約20分ずつこなした。一息つく時間はない。山田は「やり切れば振る力がつくと思う」と言った。
主力に故障者が続出した今季は96敗の球団最多敗戦記録をつくった。第1クールを見たところで、宮本ヘッドは「今まで練習をやっていなかったんだな、という印象」と語った。続けて「それでも歯を食いしばってついてきたのは評価してあげたい」。2~3年後の優勝争いをめざし、まずは体力強化から再出発だ。(伊藤雅哉)
ロッテは新監督が掲げた「全員競争」のテーマ通り、実戦重視の練習が取り入れられた。千葉県鴨川市で、1日から8日まであった前半の秋季キャンプ。シート打撃や紅白戦などをメニューに組み入れて、51人もの選手たちを見極めた。
シート打撃では、カウントを決めて走者を置くなど試合を想定。打者を次々と交代させ、競争心をあおった。「振る量が多いし、実戦形式で試せるのはいい」と、主将の鈴木。5日の紅白戦でも速球の精度をテーマに、投手13人を登板させてアピールの場を作った。
春とは違い秋季キャンプはシーズン終了後にある。「体ができあがっている中で、課題を試合感覚でこなすことが大事」と、井口監督。実戦中心の全体練習は午前中に終わらせ、昼過ぎからは個別練習に充てた。自主性を重んじる米国流を、ここでも取り入れた。
指導法も大リーグを意識した。選手へ強制的に指導者の考えを押しつけるのではなく、あくまでも一歩引いて見守るスタイル。今キャンプでも、選手に聞かれれば答えるというコミュニケーションを心掛けた。
コーチがバラバラな意見で選手に対応することがないため「指導者の意思は統一している」と、井口監督。とにかく選手第一で、野球がやりやすい環境を整えている印象だった。
来春キャンプも1、2軍の垣根を無くし、再び実戦重視で行う予定で「2月1日に今の体の状態で合流してこいと選手に言っている」と、白い歯を見せた。(大坂尚子)