11月24日、入団会見で選手一人ひとりについて話す大渕隆スカウト部長=白井伸洋撮影
2017年10月26日午前8時。プロ野球ドラフト会議が始まるまで、あと9時間。日本ハムの大渕隆スカウト部長は東京都八王子市にある、早稲田実野球部の「王貞治記念グラウンド」にいた。左打席の土に、そっと左手を置く。
清宮は背番号21 「自分だけの番号、気に入りました」
「ドラフトの朝って、することないじゃん。でも、居ても立ってもいられない、というかさ」。1位指名が決まっていた清宮幸太郎は、ここで汗を流し、声をからし、この打席でバットを振っていた。2年あまりの月日に思いをはせながら、土に触れた。
国内の試合は当然、9月にカナダ・サンダーベイであったU18(18歳以下)ワールドカップにも足を運んだ。1球1打を注視するのはもちろん、性格を把握しようと、ベンチや試合後の行動も見逃さなかった。
2010年、斎藤佑樹を1位指名する日も、東京都西東京市にある早大野球部の東伏見グラウンドを早朝、訪れた。「テレビ局のスタッフがいて、躊躇(ちゅうちょ)したけどね」。2014年に有原航平を指名するときも、朝、東伏見に行った。自身も早大野球部出身。後輩たちと縁があることを念じた。
どんなに手を尽くしても、最後は運頼みになるのがドラフトだ。それでも、後悔だけはしたくない。「当日は、もう何にもできないけどさ、練習場の空気を会場に持って行きたいんだよ」。選手への熱意が、大渕部長をいつも突き動かしている。
16日の仮契約会場、24日の新入団発表、いずれも大渕部長の姿があった。表情は厳しい。「何も終わってないよ。1月の合同自主トレ、2月のキャンプ。ホッと、なんてできるわけないじゃん」。これからは、「日本ハムの清宮」を見守っていく。(山下弘展)