昼時になるとビジネス客がおにぎりを買いに並ぶ「サムライス」=昨年12月、シンガポール、高木真也撮影
日本産のコメを世界に売り込む動きが強まっている。国内需要が減り続ける中、全国一律の減反政策が今年からなくなり、競争が激しくなるのが必至だからだ。世界的な日本食ブームもあり、2016年の輸出量は5年前の約5倍に増えたが、課題もみえてきた。
おいしく食べる工夫も広がる
シンガポールのラッフルズ・プレースにあるフードコートはお昼時になると、周辺の金融会社員らでごった返す。その一角で「てりやきサーモン」や「焼たらこマヨネーズ」の札が並ぶ5坪ほどの売り場が、日本産コメのおにぎり専門店「SAMURICE(サムライス)」だ。
週1、2回は訪れるジュリアナさん(32)は「日本のコメはかみ応えがあっておいしい。それにヘルシーでしょう」と、めんたいこのおにぎりを手に取った。
「日本人が並ぶようになった結果、現地の人にも口コミで広がった」と運営会社の長山哲也社長(43)。14年の1号店を皮切りに今では5店舗を構え、年約70万個分(約36トン)の日本産コメを使う。
日本食の店が最近増えていることも追い風になっている。農林水産省によると、昨年10月時点で海外にある日本食レストランは11万8千店と、2年前より3割増えた。シンガポールでは飲食店全体の2割近くを占める。輸出先ではアジア以外に、米国やオーストラリア、英国向けも増えている。
16年の日本全体のコメ輸出量9986トンの4分の1に当たる2504トンを占めた農機最大手のクボタ(大阪市)。コメ輸出を担当する高橋元さん(49)は「以前は『高い割においしくない』というイメージがあった」と打ち明ける。長距離輸送などで味が劣化してしまったためだ。
それを防ぐため、12年以降に…