ヒメツリガネゴケ。左は正常なもので、右はマッズボックス遺伝子を破壊したもの。遺伝子が破壊された方が長く伸びた(基礎生物学研究所提供)
花を咲かせる役割の遺伝子が、花のないコケでは茎の長さを調整したり精子の動きに作用したりすることを、基礎生物学研究所(愛知県岡崎市)などの研究グループが発見した。3日付で英科学誌「ネイチャープランツ」に掲載された。
研究所の長谷部光泰教授(植物進化学)らによると、花を咲かせる「マッズボックス遺伝子」は約20年前、花を付けないコケ植物でも見つかった。だが、コケでどんな役割をするのかは分かっていなかった。
研究グループによると、ヒメツリガネゴケのマッズボックス遺伝子を破壊すると、茎の長さが約1・5倍に伸びた。コケの精子は受精のために水の中を泳ぎ、茎先端の造精器から造卵器にたどり着くが、伸びた茎では水が先端に届かず、精子は泳げなかった。
また、水があっても精子自体の動きも鈍くなり、動き回らないものもあったという。
花が咲く植物は、花のない植物から進化したとされている。研究グループは、進化の過程で精子が水の中を泳いで生殖する方法が不要になり、マッズボックス遺伝子に花を咲かせる機能ができたのではないかと推測している。長谷部教授は「今回の発見は、マッズボックス遺伝子がどのようにして花をつくる遺伝子になったのか、その解明につながる」と話した。(大野晴香)