女子ノーマルヒルの試技のジャンプをする高梨沙羅=林敏行撮影
(12日、平昌五輪・ノルディックスキー・ジャンプ女子)
特集:平昌オリンピック
SPIN THE DREAM 羽生結弦
着地を決めた。2回目に103・5メートル。高梨沙羅は両手を上げて喜んだ。「(2014年)ソチ五輪の悔しい思いをバネにやってきた。最後にいいジャンプ。気が緩んだ。すごく自分の中でも記憶に残る経験をさせてもらった」
圧倒的な飛距離と引き換えに、着地での飛型点には目をつぶる。高梨がこの戦い方を見直さざるを得なくなったのは、ソチ五輪の惜敗がきっかけだった。
4・4点。五輪で初めて正式種目に採用された女子ジャンプの初代女王になったカリーナ・フォクト(ドイツ)との差だ。4位の高梨が敗因に挙げたのがテレマーク。飛型点(60点満点)を見ると、53点が2回のフォクトに対し、高梨は51点と50点。計5点の差が勝敗を分けたといえる。
足を前後にずらし、両手を水平に広げるテレマーク姿勢ができていれば――。「女子ジャンプのレベルはだんだん上がっている。混戦では最後の決め手になる」。弱点に真っ向から向き合った。牧野講平トレーナーの指導のもと、腹筋や背筋といった体の幹となる部位を徹底的に鍛えた。
昨夏からは新たな試みもした。映像分析だ。スタート位置の後ろから映したり、着地の瞬間を映したりと4カ所から動画を撮影。昨季の男子ワールドカップ(W杯)総合上位の選手と動きを比較した。空中姿勢から着地へ動き始めるのはどの辺りからかなどを頭にすり込ませた。
平昌五輪前、最後のW杯となった1月28日のリュブノ(スロベニア)大会。4位に終わりながら55・5点、56・0点と飛型点はトップだった。「4年間練習してきた集大成。最後にしっかり決めたい」。テレマークを決めた先に、悲願のメダルが待っていた。(勝見壮史)