韓国・京畿道の中部戦線で2016年1月、軍事宣伝放送再開に備えて大型拡声機に擬装網をかける韓国軍兵士(東亜日報提供)
韓国が、南北の軍事境界線付近で行う北朝鮮向けの軍事宣伝放送で、最近は金正恩(キムジョンウン)朝鮮労働党委員長を名指しで批判しなくなった。韓国野党、自由韓国党の金学容(キムハギョン)議員が、韓国軍合同参謀本部から受けた説明として明らかにした。
金議員によれば、同本部は北朝鮮住民が逆に反発することを懸念したと説明している。放送では先月、平昌(ピョンチャン)冬季五輪での南北合同での開会式入場や女子アイスホッケーチーム結成など、民族の一体性を強調した内容を流していたという。
同放送で、北朝鮮の政治宣伝の偽りなどを指摘してきた脱北者は最近、韓国国防省から「厳しい発言が多い」という理由で契約更新を断られた。この脱北者によれば、最近の放送は「金正恩」と呼び捨てにせず、「最高領導者」と呼ぶほか、北朝鮮への批判よりも韓国の歌を流すケースが増えているという。
韓国は朴槿恵(パククネ)前政権時代の2016年1月、北朝鮮による4回目の核実験を契機に、北朝鮮が最も嫌がる心理戦とされる大型拡声機による軍事宣伝放送を再開していた。
一方、文在寅(ムンジェイン)政権は昨年7月、北朝鮮に対し、軍事境界線付近での挑発行為を相互停止するための南北軍事会談の開催を提案。今年1月の南北閣僚級協議で開催に合意した。相互停止する挑発行為のなかには、軍事宣伝放送が含まれているとみられる。(ソウル=牧野愛博)