
平昌(ピョンチャン)五輪カーリング女子で銅メダルを獲得したLS北見の選手たちが使って話題になった「そだねー」。全国的に広まった一方で、北海道内でも「北海道弁だとは思わない」という人がいる。どうしてなのか。
「『そだねー』は、このあたりでは普段使っている言葉。こんなに広まるとは思っていなかった」。LS北見の拠点で、18日に始まったパシフィック・アジア代表決定戦の開催地でもある北海道北見市常呂町にある飲食店「レストハウスところ」の従業員はそう語る。
幅広い世代で流行した理由について、日大の田中ゆかり教授(日本語学)は「第一に、方言に価値を見いだし、愛(め)でる『方言萌(も)え』の時代になったから。第二に、『そだねー』が共感の言葉で、ツイッターなどSNSとのなじみがよく、一気に拡散したから」と分析する。
田中教授によると、今は誰でも標準語を使えるようになり、逆に方言が肯定的に捉えられるようになった。若者が出身地ではない地域の方言を使用する「方言コスプレ」という現象が生まれて久しいという。「『そだねー』は、『方言コスプレ』がすでに都会の若い層以外にも自然に受け入れられていることを示すものとも言える」と指摘する。
さらに田中教授は「試合中、ピンマイクで本来は聞くことのできない選手たちの方言が拾われ、観戦する側も一緒に参加している気持ちになれたこともポイントだ」と話す。
起源は「そんだね」
一方で、北見市内にも「北海道弁と思ったことがない」「五輪で初めて聞いた」などと言う人がいる。ある女性は「常呂町は浜言葉なので、内陸の北見市中心部とは言葉が違うのでは」と話す。
北海道方言研究会長を務める北海学園大の菅泰雄教授(日本語学)によると、北海道には大きく分けて二つの方言があるという。東北地方の影響を受ける海岸方言(浜言葉)と、明治以降に全国の開拓移住者によって形成された内陸方言だ。
海岸方言は、江戸時代に開けていた函館や松前など道南から、日本海、オホーツク海、太平洋の海岸地域まで広がっている。北見市常呂町は海岸方言が残る地域だ。菅教授は「『そだねー』は、海岸方言の「そんだね」に標準語が混ざった言葉」と解説する。
道内で「そだねー」に違和感を覚えるのは、札幌など内陸の都市部の言葉は全国の方言が混ざってできたため、標準語に近く、自分たちの話す言葉が方言だと気づかないからだという。
また、道外でも話し言葉で「そだねー」を使うが、北海道弁は標準語と違って語尾のイントネーションが下がらず、アクセントが頭に付きやすい特徴があるという。(浅野有美)