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就活スーツは必要?朝日採用チームの提案に共感や戸惑い

作者:佚名  来源:asahi.com   更新:2018-5-21 14:04:21  点击:  切换到繁體中文

 

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リクルートスーツと景気の変遷


就職活動シーズン真っ盛りの今、街にはリクルートスーツ姿の学生たちが目立ちます。スーツを着ない社会人も増え、仕事場での装いは多様化している一方で、就活生の同じようなスーツはまるで“制服”のようです。この現象、どうとらえたらいいのでしょう? 皆さんと一緒に考えたいと思います。


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周りと同じ「考えず楽」


今回のテーマ、実は朝日新聞社の採用チームが3月末、ツイッターで呼びかけたことがきっかけです。


「各社の採用担当者のみなさん、『リクルートスーツで来なくていいですよ』と共同宣言しませんか? 受験者の個性を見たいわけで、服装もひとつの自己表現です」


このツイートは5千回以上リツイートされ、ネットメディアにも取り上げられました。その狙いについて、山口智久・採用担当部長は「誰もがそろいもそろって黒か濃紺のスーツ。そうでないといけないと思っているのなら、苦しそうだし違和感があった」。フェイスブックの採用ページでも「リクルートスーツを着ていないからといってマイナス評価はしません。着るのが苦痛、自分らしくないと思われる方は、無理して着る必要はありません」と宣言しました。


が、その後もスーツ姿ではない学生はほぼゼロでした。面談に来た女子学生は「ツイートには共感しました。靴から化粧の仕方まで決まっているような就活は窮屈で」といいますが、「でも担当者の思いつきで、社の正式見解とは違うかも」と不安になり、黒いスーツを選んだそうです。


先月、東京都内で開かれた企業の合同説明会でも似たような不安を聞きました。立正大4年の長谷川知美さんが元々持っていたスーツはグレー。友達に「就活用と違う」と言われて、黒を買いなおしました。


「元のスーツでここに来ていたら不安だったはず。みんな一緒がいいとは思いませんが、採用担当者に変に思われて、自分の話を十分聞いてもらえなくなったら怖い」


積極的に「黒」という就活生も。桐朋学園大4年の黒崎雅文さんは「黒が一番フォーマルに思います。紺は社会人の色」。根拠は、就活を描いた映画「何者」などだそうです。


また、「まわりと同じだと考えなくていいので楽。服装よりもっと大事な面接対策に時間を割きたい」と黒いスーツを選ぶ学生もいました。


中には脱スーツの学生も。上智大4年の中村継蘭さんは、持っている私服で最も「フォーマルな感じ」のジャケットとパンツで就活中。スーツを着ないことで減点するような会社なら働きたくないそうです。


「周囲と同じ服装の人を否定はしませんが、レールに乗った人生の通過儀礼のようで違和感があります」


厳しい競争「無難な黒」


大学生協東京事業連合によると、大学生協を通して売れるリクルートスーツは男子は6割が黒の無地でほかは濃紺、女子は黒無地のみだそうです。でも昔はもっと多様でした。


就職活動の定番服がスーツになったのは、朝日新聞の記事によると1970年代のようです。当時から就活向けスーツを販売する三越伊勢丹によると、特に多様だったのが女子です。90年代前半は、紺とグレーを中心に薄いピンクなどのパステルカラーもありました。胸元にリボンタイも普通でした。


それが「就職氷河期」という言葉が流行語になって2年後の96年ごろを境にパステルカラーとリボンタイが消滅。2000年から数年でほぼ黒一色になっていきました。


男子も90年代は紺とグレー中心だったそうです。90年前後の男性誌には、周りに差を付けるブランドものを勧める記述もあり、当時の多様な装いがうかがえます。


なぜ多様性が失われたのか。「『就活』の社会史」の著書がある難波功士・関西学院大教授(社会学)は、就職環境の厳しさが理由だと考えます。「普通にやればどこかの内定はとれると思えた時代と違い、減点を恐れる気持ちが横並び意識を生んでいる」


でも、有効求人倍率はここ2~3年、バブル期並みなのでは?


「状況はまだ厳しい」と難波さんは言います。企業への採用申し込みがネット経由になり、数多くの会社にエントリーすることが簡単になった結果、内定を多く得る学生とそうでない学生との格差が開く傾向にあります。加えて、3年生での企業インターンも普通になるなど、企業の採用活動が五月雨式にバラバラになったため就活期間が長期化している、と難波さんは指摘します。


「非正規雇用が増え、納得いく内定が遠い時代。ネットなどの都市伝説的な情報にも学生は頼る。『減点されない黒』もそのひとつです」


企業の価値観に合うか


脱リクルートスーツを呼びかけた朝日新聞社採用チームのツイートに、他企業で採用に関わる人たちから反応がありました。


「『面接はスーツではなく、学校へ行くような普段着で来てください』と20年前からやってます」と返信したのは、朝日放送「おはよう朝日です」など関西の情報番組の制作協力をしているピー・キューブの池田由利子社長(52)。「スーツ姿で借りてきた猫のような学生より、ありのままの姿を見たいからですね」と話します。ただ、「普段着」と伝えてもスーツで来る就活生もいて、「減点はしませんが……」。戸惑いはあるそうです。


仕事で着られればOK


中部地方の自動車販売会社の採用担当者は「説明会は私服でOKを何年もやってます」と返信。聞くと、説明会は「会社を見てもらう場」で学生はお客さんだから、とのこと。 ただし、採用試験となると「こちらが学生を見る場なので、それなりの格好で来てもらいます」。社員は普段、スーツ姿で顧客に対応します。「仕事で着られるスーツならOKです。色は見てもいません」


「就活生らしい服装をすることも大事」と語るのは先月の合同説明会に参加していたシステム開発会社、テイクス常務の堤大司さん(41)。堤さん自身はグレーのスーツに青いチェックのシャツでしたが、「学生がこの服装ではダメですね」と言いました。


同社の社員は顧客の事業所に詰めて働きます。「立場をわきまえた格好ができる人が欲しい」と堤さん。


採用する企業の見解もさまざま。就職情報サイト「リクナビ」を運営するリクルートキャリアが14年、企業の人事担当1304人に聞くと、約半数が面接や説明会で「私服OK」とする場合があると回答。ただ、「私服OKの意味を考えた上でリクルートスーツを選択してほしい」と答えた担当者もいました。


取材した学生では、私服OKとされる商社の就職イベントに行くと、社員全員がノーネクタイながらスーツ姿で当惑したという人も。逆に、私服OKの説明会にスーツで参加した学生が社員に注意された例もあったそうで、一筋縄ではいきません。


自ら判断すること大切


一方で、クールビズが定番化するなど、職場での服装は多様化しています。三越伊勢丹も「カジュアルな仕事着の普及でスーツの販売は減っています」と話します。


商社の丸紅は今春、「セルフビズ」と銘打ち、社員各自が仕事に適した服装を選ぶルールを導入。従来は季節や曜日でカジュアルな服装を認めていましたが、見直しました。


「学生の服装もセルフビズ同様、自ら判断できることが大切で、こちらが指定すべきでないと考えます。スーツを着ない学生に違和感を覚える面接担当者は減るかもしれません」と採用担当者は語ります。


リクルートキャリアの就職みらい研究所主任研究員、増本全さんは「結局、その企業の価値観に合っているかどうか」だと言います。「対人折衝がベースの会社では、身なりで信頼を落としかねない人は採りたくないでしょう。服装を見る目は厳しいはず」と増本さん。


では、企業の価値観はどうすれば分かるのでしょう。「インターンなどで社員の姿を見ていれば、おのずと見えてくるはずです」



「周りが全員黒スーツという状態は、むしろ違いを出すチャンスだと思いました」。今年、大手金融に入社した元慶応大生は振り返ります。オーダーメイドの濃紺の無地やストライプなど「金融マン」的なスーツを着用し、第一印象の好感度アップを狙いました。「面接のドアを開けた瞬間、『分かってるね』と思われればと。当然、真の勝負はそのあとですけど」


インターンなどで「行きたい業界の服装センスを見る機会はいくらでもある。活用しないのは惜しい」とも言いました。


とはいえ、服装が採用に影響することはあるのでしょうか。


企業と学生の事情に詳しい採用コンサルタント、谷出正直さんは「当落線上の採否が服装の印象で決まることは、あり得ます。黒スーツが無難なのは確か」と言います。ただし、「無理に黒を着る必要もないのでは」とも話します。


就職後に会社の雰囲気になじめず悩む人もいます。「服装に限らず、偽った自分で内定を得るより、自分を受け入れてくれる会社に選ばれた方が入社後も良いと思います」


私の就職活動は20年以上前。「パリッとしてれば何でもええやろ」と、深く考えず紺スーツ。なので、「考えなくて楽だから黒スーツ」はよく理解できます。一方、元慶大生のスーツ戦略も「積極的で面白いな」と好感を持ちました。


スーツは黒? カジュアルはダメ? と不安に思うよりも、谷出さんが言うように、自分の価値観を企業にぶつけた方が幸せな出会いがあるのではないでしょうか。服装では、それで内定が出る会社もあるという取材結果だったと思います。


皆さんはどう思いますか。(長野剛)



リクルートスーツについてのご意見や体験をお寄せ下さい。


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