前半、川崎の中村(右奥)は先制ゴールとなる直接FKを決める=関田航撮影
(20日、川崎3―0清水)
37歳だからこその、技術と経験が詰まったプレーだった。
前半19分、川崎が得たゴール正面からのFK。蹴るのは、中村。最初はパスを考えたが、相手選手やGKの立ち位置を見て、思い直した。「壁に背の高い選手が並び、GKが壁を信頼している位置取りだった。シュートが壁を越えさえすれば、直接狙える」。確信を持って蹴った球は、試合を動かす先制点となった。後半12分には、相手選手から球を奪ってだめ押し点。チームを連勝に導いた。
日本サッカー界の関心はいま、W杯ロシア大会の日本代表メンバー23人が誰になるかに注がれる。2010年南アフリカ大会に出場した中村は、14年ブラジル大会も有力候補と目されたが、最後の選考からもれた。「あの喪失感は一生忘れられない」。落選直後、自身のブログにこう書き込んだ。
4年前を振り返りつつ、中村は言う。「自分で乗り越えていくしかないんだよね。誰も助けてくれないから」。地道な練習とケアを積み重ね、リーグ最優秀選手やJ1初優勝を勝ち取ってきた。
「悔しい思いをした多くの選手の上に、代表メンバーはいる。その座は重い。やってもらわないと困る」と中村。今回、川崎では25歳の大島が最終候補の27人に残っている。「俺がチームを勝たせる、くらいの気持ちで、勝敗を決するようなプレーをばんばんやってほしい」。自らの思いをピッチ上で体現し、後輩を送り出した。(清水寿之)