作家の辻村深月さん=東京都新宿区 不登校や引きこもりの現状を伝える「不登校新聞」が、5月に創刊20年を迎えた。当初から編集方針に「当事者視点」を掲げ、これまでに延べ1千人を超える不登校の子どもたちの声を紹介。不登校経験者がインタビュー取材や手記の執筆者として編集に関わるなど、当事者や家族に寄り添い続けている。
不登校 文部科学省によると、病気や経済的な理由をのぞき、何らかの要因で登校しない、したくてもできない状況にあり、年間30日以上欠席した児童生徒。2016年度は小学生が3万448人、中学生は10万3235人。いずれも4年連続で増加している。 「不登校が問題なのではなく不登校を問題とする社会こそ問題なのである」。1998年5月1日付の不登校新聞の創刊号。1面の論説にこんな文章を載せ、学校に行けない子どもに寄り添う、と宣言した。 この創刊号で「子どもいいたいほうだい」という座談会に出ていたのが、当時16歳、現在の編集長である石井志昂(しこう)さん(36)だ。中学2年のころ、いじめや校則になじめなかったことから不登校に。その後、編集に携わり、2006年から編集長となった。「学校に行くべきだという理想論の前に、学校に行けない現実がある。子どもを社会通念に合わせるのではなく、子どもの目線に合わせたい」 発行元はNPO法人「全国不登校新聞社」。月2回、8ページのタブロイド判とウェブ版を発行し、月820円。発行部数は3100部で、取材・編集は石井さんをはじめ常勤スタッフら約10人が担う。1ページ分は、10~40代の不登校経験者ら約130人からなる「子ども若者編集部」が企画から関わっている。 埼玉県入間市の水口真衣さん(21)も「編集部」の一員だ。小学校のころから長い間、自分に課された「いじられキャラ」に苦しんだ。物まねをさせられたり、行動をからかわれたり。「叫びたいくらい嫌でも、笑って演じていた」 高3のある日、友人たちに「嫌だ」という正直な気持ちをLINEで送った。すると、返信は「じゃあ、もうつきあわない」。学校に行くのが怖くなり、家から出られなくなった。 2年前の春に見たテレビ番組で、不登校新聞を知った。「同じことで悩んでいる人がいた」。母に相談し、1カ月後には編集会議に参加した。「私は不登校になれたから、生き続けられた。学校のことで悩んでいる子に『あなただけじゃない』と伝えたい」 文部科学省の調査によると、小中学生の数はこの20年で2割超減少する一方、不登校の小中学生は16年度に13万3千人(全児童生徒の1・35%)と、96年度の9万4千人(同0・75%)から4割以上も増えた。 創刊号で論説を書いた全国不登… |
学校行けない、君だけじゃない 不登校新聞20年の歩み
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