早坂暁さんのメッセージを掲載した「まちづくりかわら版」と西山陽一朗さん=松山市 愛媛県出身の作家・脚本家の故早坂暁さん(享年88)が昨年末に亡くなる直前、「あなたたちに伝えたいこと」と題して地元の中学生たちに最後のメッセージを残していた。誠実な文章に心を打たれた地元住民らが、今年に入ってメッセージの全文を掲載した「まちづくりかわら版」の臨時号を発行し、静かな反響を呼んでいる。 「あなたたちに伝えたいこと」早坂暁さんメッセージ全文 早坂さんの業績知らない若者たちへ 早坂さんは1929年に松山市北条地区の商家に生まれた。日大芸術学部卒業後、生け花の評論活動などを経て脚本家となり、「天下御免」「夢千代日記」「花へんろ」などの脚本を手がけた。昨年12月に88歳で死去し、松山市からは市栄誉賞を贈られた。 早坂さんからメッセージが寄せられるきっかけとなったのは、昨年春から「北条地区まちづくり協議会」が中心となって企画した「早坂暁とふるさと北条展」と、早坂さんを特集した「かわら版」の編集だったという。協議会の西山陽一朗さん(46)によると、地元で早坂さんの業績を知らない若者が多いことを知り、早坂さんの米寿を記念して企画した。 お礼の手紙読み上げた1カ月後…訃報 西山さんは旧北条市職員時代から早坂さんと親交があった。昨年夏に都内在住の早坂さん宅を2度訪ね、かわら版用にインタビューした。かわら版は昨年10月に発行し、地元の図書館で企画展も開いた。松山市立北条北中学校の生徒がこの企画展を総合学習の一環で訪れることになり、中学生の案内役を頼まれた西山さんは早坂さんに中学生へのメッセージをお願いしたという。 ほどなくして早坂さんから返事が届いた。「一言でもいただけたら」という西山さんの予想を覆し、人生の意義や人が助け合い分かち合うことの大切さなど、早坂さんの価値観が凝縮した約1千字に及ぶメッセージだった。 10月下旬、企画展を訪れた中学生らに西山さんがメッセージ全文を読み上げ、生徒たちは早坂さんにお礼の手紙を書いた。「メッセージをいつも持って登校しています」「小説家になりたい」「命のありがたさを当たり前に思わず一日一日を大切にしたい」――。これらの手紙すべてに早坂さんは目を通し、喜んでいたという。早坂さんが亡くなったのは、それから1カ月ほど後のことだ。 かわら版臨時号に全文掲載 中学校ではこのメッセージを生徒全員に配布。保護者らも読み、地元では反響が広がっていた。そこで、地域の約2500戸に無料配布しているかわら版の臨時号を発行し、全文を掲載することにした。 西山さんによると、早坂さんは生前、「自分の思いを次の世代にバトンタッチしたい」と話していたという。「メッセージには、早坂さんが次の世代に伝えたい思いがあふれている。いろいろな人に読んでほしい」と期待を寄せた。(藤家秀一) |
早坂暁さん、中学生に遺した伝言 価値観凝縮の1千字
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