昨年9月にハリケーン「マリア」に襲われたカリブ海の米自治領プエルトリコで、死者数が政府発表の70倍を超える4600人に上るとする推計をハーバード大などのチームが29日、発表した。多くが薬の不足や医療設備の被害などで治療を受けられなかった関連死とみられるという。
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米医学誌ニューイングランド・ジャーナル・オブ・メディシン(電子版)に掲載された。
研究チームは、無作為に抽出したプエルトリコの3299世帯に聞き取りを行い、マリアが直撃した昨年9月20日から年末までに死亡した人を調べた。前年の同期間と比べ死者数が6割増えており、プエルトリコ全土で推計すると4645人に上るという。関連死も含まれるが、約1800人が死亡した2005年のハリケーン「カトリーナ」の被害を上回ることになる。
地元政府の公式集計では死者は64人にとどまる。原則、医師などが直接調べて死亡証明を出す必要があるほか、災害による病院などの被害で治療が受けられず亡くなった関連死が見落とされやすいという。研究チームは「プエルトリコのインフラの貧しさに対する米政府の怠慢が明らかになった」としている。
マリアによる死者数をめぐり、メディアが地元住民の話などから、公式発表が大幅に少ないと相次いで報じて批判が起きていた。地元政府は、ジョージワシントン大に依頼し、死者数の再集計を進めている。(ワシントン=香取啓介)