学校法人森友学園(大阪市)をめぐる一連の問題で、上脇博之(ひろし)・神戸学院大教授は5日、公文書変造などの容疑で告発した佐川宣寿(のぶひさ)・前財務省理財局長らを不起訴にした大阪地検の処分を不服として、大阪の検察審査会に審査を申し立てた。大阪の弁護士らのグループも同日、背任容疑で告発した国有地売却時の財務省幹部らの不起訴を不服として審査を申し立てた。
特集:森友学園問題
上脇教授は申立書で、財務省の決裁文書から削除された安倍晋三首相の妻昭恵氏の記述を「文書作成者の本音」とし、「本音」が消えた文書の本質が変わっていないとする検察の見解は「市民の常識と違う」と指摘した。また、弁護士グループは申立書で、国有地売却で値引きの根拠とされた地中ごみの量を正確に計算していないと幹部らが認識していれば、背任罪に問えると主張した。
弁護士グループの一人、阪口徳雄弁護士は記者会見で「現場の検事は一生懸命やったが、上層部が政権に忖度(そんたく)したと思う。国民の良識で判断してほしい」と訴えた。
大阪地検特捜部は先月31日、佐川氏を含む当時の財務省幹部ら38人全員を全ての告発容疑で不起訴処分とした。今月4日には別の市民団体が検察審査会に審査を申し立てている。検察審査会で「起訴相当」か「不起訴不当」が議決されれば地検は再捜査をすることになる。(一色涼、多鹿ちなみ)
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〈検察審査会〉 有権者の中からくじで選ばれた11人が検察官の不起訴処分の妥当性を審査する。11人中6人以上が不起訴が正しいと判断すれば「不起訴相当」、6人以上がさらに詳しく捜査すべきだと判断すれば「不起訴不当」、8人以上が起訴するべきだと判断した場合は「起訴相当」という議決を出す。審査会が「不起訴不当」か「起訴相当」の議決を出した場合は検察官はその事件を再捜査し、起訴するか判断する。起訴相当の議決に対し、検察官が起訴しなかったり法定期間内に処分をしなかったりした場合は再び審査し、改めて11人中8人以上が起訴を求める「起訴議決」をすると、裁判所が指定する指定弁護士が強制的に起訴する。