近鉄四日市駅(左)の目の前にある「プレミスト四日市駅前」(右端)。1億円超の部屋も売れた=三重県四日市市
名古屋近郊の都市で、駅に近く、比較的高層のマンション建設が目立ってきた。名古屋中心部は再開発が進んで分譲価格が高騰。そのあおりで、値頃感と交通利便性が魅力の「郊外・駅近物件」の人気が高まっているためだ。
【特集】名古屋駅、変わりゆく街
「桑名新世紀」「都心直通・特急&快速利用というゆとり」。「ライオンズ桑名駅前グランフォート」のサイトには、便利さを強調する言葉が並ぶ。JRと近鉄の桑名駅(三重県桑名市)から徒歩2分。桑名駅から近鉄名古屋駅まで急行で20分という点を売りにしている。
地上15階建て145戸で、来春完成の見込み。価格帯は3千万円台半ばから6千万円台で、3・3平方メートル当たりの「坪単価」は190万円程度。名駅から市営地下鉄で20分ほどの名古屋市千種区の駅近マンション(来春完成)に比べ、100万円ほど安い。桑名駅前の物件を販売する大京の担当者は「名駅に通勤する人には割安。約750件の問い合わせが入った」。
近鉄四日市駅から徒歩1分の「プレミスト四日市駅前」(三重県四日市市)は昨年3月に完成し、121戸(地上15階建て)が売れた。3千万円台から1億3千万円台までの多彩なプランが人気だった。売り主の大和ハウス工業は「医師や、名古屋への通勤者を中心に販売が好調だった」。
岐阜県でも動きは活発だ。大垣市では、JR大垣駅前の築半世紀超のビルや市営駐輪場が一体開発され、地上17階建てマンションと商業施設ができた。マンションは一昨年9月に完成し、4カ月ほどで完売。JR岐阜駅の近くでも、「駅直結」を売りにした24階建てマンションが今年度中にできる。
これらの物件が人気を集める背景にあるのが、名駅再開発の進行だ。名駅地区は2000年ごろから、JRセントラルタワーズやミッドランドスクエア、大名古屋ビルヂング、JPタワー名古屋など複合商業施設が相次いで完成。東海地区の人とお金が一気に集まるようになり、名駅へのアクセスの良さが物件の訴求ポイントになっている。
商業集積が拡大すれば、資産価値が高まって分譲価格も跳ね上がる。広告会社の新東通信によると、18年の名古屋市内の新築分譲マンションの平均坪単価は約198万円。10年で3割ほど値上がりした。最近できた名古屋市中区のタワーマンションには、坪単価300万円超とされる部屋もある。「異次元の金融緩和」であふれたお金が市場に流入し、名駅再開発を見越した投資マネーも集まった。そこで、高騰した名古屋都心のマンションを敬遠し、郊外の駅近物件に向かう動きが出てきた。
OKB総研の渡辺剛氏は「名古屋の不動産価格が上昇したことで、郊外の懸案だった中心市街地の活性化が進みつつある。名古屋近郊の都市にとっては、人口流出を防ぐことにつながる動きだろう」と話す。(友田雄大)