新スタジアムのすぐ脇に立つ、今年完成したホテル群。W杯が終わると、マンションとして売り出される=2018年6月8日、ロシア・サランスク、高野遼撮影
サッカー・ワールドカップ(W杯)ロシア大会が14日(日本時間15日午前0時)、開幕する。11の開催都市のうち、最も小さな町サランスク。日本が初戦を迎える人口約30万人のこの町は、W杯開催を機に爆発的な成長を狙っている。
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ロシア西部に位置するサランスク。多民族国家のロシアには22の共和国があり、ここはモルドビア共和国の首都でもある。看板にはロシア語と並び、現地語の表記がある。
人口約30万人は、福島市や東京都豊島区ほどの規模。W杯開催が決まると、ロシア国内では「なぜ時代遅れの村で?」と報道された。町にはホテルも少なく、日本代表の応援に訪れるファンの多くは、宿泊先を確保するのに苦労した。
そんな町が、いま大きく変わり始めている。丸みを帯びたオレンジ色のスタジアム「モルドビア・アリーナ」は今年完成したばかり。「かつて、ここは沼地でした。何もなかったんです」と共和国の広報担当、ロジオン・ムルタジンさんは言う。
その風景は様変わりした。スタジアムの周辺には10階建て以上のマンションが林立。学校、公園、ショッピングセンター……。真新しい施設が並ぶ。
大規模な開発は、W杯開催が決まった2010年ごろから始まった。スタジアムのすぐ脇に今年4月に完成した6棟のマンションは、大会期間中はホテルとして営業。その後に1700室を住宅用に売り出す計画だ。
W杯に向け、スタジアムや空港ターミナル、道路建設などに350億ルーブル(615億円)を国や地元政府が捻出。これがホテルや住宅への300億ルーブル(527億円)の民間投資を呼び込んだ。
さながら、かつての日本のニュータウン開発を思わせるような勢い。若い世代が次々とここに移り住んでいるという。古い住宅地から新築のマンションに引っ越し、子ども2人を育てるエカテリーナさん(32)は「何でもそろっていて、昔の2倍は便利。W杯のおかげです」。
共和国のウラジミール・ボルコフ首長は「W杯が終わっても、この町の発展は終わらない。さらに開発を続け、人口は4万人増える。中国や韓国からの出資も多い。日本からも期待しています」と、町の将来に自信を見せる。
日本はこの地で19日、コロンビアと対戦する。(サランスク=高野遼)