「叫び」〈1910年?〉(C)Munchmuseet
秋の大回顧展は、100%ムンク――。東京・上野の東京都美術館で10月に始まる「ムンク展―共鳴する魂の叫び」に並ぶ約100点は、すべてがノルウェーの国民的画家エドワルド・ムンク(1863~1944)の作品で、強烈な感情を表現した世界を満喫できる。中でも注目は、初来日となる「叫び」だ。
主催の朝日新聞社などが14日、東京・麻布で記者会見を開き、発表した。「叫び」は、神経症や女性トラブルに悩まされたムンクが不安や孤独を表現したもので、同名で似た構図の絵画や版画が複数存在する。今回来日する作品は、人物の瞳が無いテンペラ・油彩のバージョンだ。
ほかにも、「接吻(せっぷん)」や「吸血鬼」「マドンナ」など、「叫び」と同じく愛や死をテーマにした連作「生命のフリーズ」の作品が来日。ムンク美術館の所蔵作品を中心に、約60点の油彩画のほか、版画などが展示される。
ムンクは、幼い頃に母や姉を病気で亡くし、孤独や不安と常に隣り合わせだった。個展が大成功し勲章をもらうなど40代ごろから評価が高まる一方、神経症やアルコール依存に悩まされた。ナチス台頭後は、退廃芸術と糾弾され、ドイツ国内の作品は押収。占領下となった祖国ノルウェーの自宅で一人逝った。
展覧会では、そんな浮き沈みが激しい画家の20代から死の直前の作品までを紹介。60年に及ぶ画業を「ムンクとは誰か?」から「画家の晩年」まで9章に分けて振り返る。愛と葛藤の画家による、時に奇妙で時に幻想的な独特の世界を堪能できそうだ。
「ムンク展―共鳴する魂の叫び」は10月27日から1月20日まで。前売り券は一般1400円、大学生・専門学校生1100円、高校生600円、65歳以上800円(当日券はいずれも200円増)。公式サイトは
https://munch2018.jp/
。(木村尚貴)