地震で散乱した家財を整理するボランティアたち=19日午後4時24分、大阪府豊中市、吉沢英将撮影
18日朝に最大震度6弱の揺れに襲われた大阪府北部の被災地では、高齢者や障害者ら「災害弱者」への支援も本格化し始めた。しかし、水道やガスなどライフラインの完全復旧はまだ先が見えず、生活再建に影を落としている。
大阪北部地震
震度5強の揺れを観測した大阪府豊中市。ある高齢の夫婦宅へと市社会福祉協議会の職員とボランティアの3人が向かった。
「すごいな」「うわ、こっちの部屋もや」。19日夕、マンション3階の一室に入った。倒れた本棚、床に積み重なる本の山、ガラスの破片――。足の踏み場もない。
住人は80代の夫婦。夫は要介護度5で認知症を患い、妻も病気がちで腰を痛めている。途方に暮れた妻が社協に連絡したという。
「こりゃしんどいわ。お母さんには無理や。任しとき」。登録ボランティアの男性の言葉を合図代わりに作業が始まった。傾いた本棚を戻し、散らばった本を入れていく。割れたガラスを丁寧に拾い、細かなガラス片を掃除機で吸った。その様子を妻が申し訳なさそうな顔で見守っていた。
1時間ほどで歩ける空間が確保でき、「応急対応」は終了。妻は「本当にもう、助かりました」。ボランティアの1人が「また連絡してや」と返した。
同府茨木市では地震から24時間が過ぎた19日朝の時点で65歳以上の単身高齢者2265人、障害者1863人、要介護3~5の人2454人と連絡がついておらず、職員が名簿を元に電話連絡に追われた。
電話に出ない約150人の安否確認のため、市職員6人が3班に分かれて午後から戸別訪問した。職員が名簿の住所とスマートフォンの地図を見ながら、目的の家を探す。呼び鈴を押しても反応がなかったり、集合住宅で部屋番号が分からずたどり着けなかったり。16軒目で、やっと会うことができた。「おけがはないですか」と職員が声をかけると、住人女性は「大丈夫。夜は不安で、避難所に行ってました」。互いに安堵(あんど)の表情を見せた。
同府高槻市では19日夕までに断水は解消されたが、濁り水の被害が広範囲にわたった。午前10時前、ガスも一部止まったままの登町地区にある桜台小学校に来た給水車の周りに、ペットボトルや水筒を手にした人たちが集まってきた。「うちはトイレも流されへん」。保条きみよさん(70)と夫の隼人さん(76)が住む団地では水道管が破裂したという。
隼人さんが地震直後、ペットボトルの水を探し、隣の同府摂津市まで5店舗を車で回ったが全て品切れ。18日夜は2時間以上給水所に並んだ。「昨日は足つってもうた。若かったらええけど……」と両足をさすった。
2人は受け取った給水袋(3リットル)2袋に水を入れてもらって自転車へ。かごに入れるのもひと苦労だ。
団地まで歩いて5分ほど。「水、出るで!」。一足先に着いていた隼人さんが部屋から飛び出してきた。きみよさんにマグカップに入った水をみせたが、「濁ってる」。ガスも通じておらず、「今日はパンでしのぎます」。(吉沢英将、大部俊哉、永野真奈)