無料のシャンプーの提供を始めた「トリコJR茨木店」=19日夕、大阪府茨木市
大阪北部地震の影響でガスの供給が止まっている被災地で、美容師たちが無料の「シャンプーサービス」を始めた。湿度の高い梅雨の季節に、お湯を使って洗髪ができない被災者からは、感謝の声が上がっている。
美容室「トリコJR茨木店」(大阪府茨木市)のオーナー浜田太輔さん(37)は、熱帯魚飼育用のヒーターで35度まで水を温め、電気ポットのお湯を足して温水を確保。19日午後からシャンプーのサービスを始めた。1995年の阪神大震災ではこの方法で水を温めた例がある、と聞いたという。
シャンプーをしてもらった幼稚園児の女の子(5)は「お母さんやお父さんよりお店の人は上手。きれいになってよかった」と笑顔。母親(42)によると、余震の時には跳び起きて布団をかぶるという。
浜田さんが温水シャンプーを被災者に提供しようと思い立ったきっかけは、ある常連の女性客。女性が避難所から自宅に一時戻り、水で髪を洗っていた。「シャンプーで喜んでもらえるなら」と朝からヒーターを調達。浜田さんは「つらい時に少しの時間でもぜいたくな気持ちになってくれれば」と話す。
美容室「Liliy」(同市)も19日から、無料シャンプーを始めた。店のシャンプーの多くは、地震で棚から落ちて容器が破損。電気温水器2台のうち1台も壊れた。18日は予約キャンセルも相次いだ。
それでも高瀬功二代表(38)は発災後、自身を励まし、物資の援助を申し出る友人たちの優しさに、心が温かくなった。「『被災地』にいる自分たちもできることをしたい」と、無料シャンプーを始めた。
友人から教えてもらってシャンプーした市内の主婦伊藤薫さん(48)は「久しぶりにお湯に触れた気がする。余震におびえる気持ちが楽になった」と話した。
19日現在、茨木市内の6万4千戸のガスの供給が止まっている。大阪ガスは25日までの復旧を目指している。(波多野陽、吉川喬)