埼玉西武ライオンズの西川愛也選手=2018年5月10日午後2時19分、埼玉県所沢市上山口、山口啓太撮影
昨夏、埼玉県勢初の全国制覇を果たした花咲徳栄高から、いま埼玉西武ライオンズで1軍昇格を目指す西川愛也選手(19)も大きく貢献した一人だ。3番打者で9安打10打点と大活躍した西川選手が、頂点に立った夏を振り返り、今年も甲子園を目指す球児たちにメッセージをおくる。
過去最多700試合をライブ中継 バーチャル高校野球で全試合中継の大会も
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―全国制覇して感じたことは
これまでやってきたことが全て報われたなと思いました。甲子園では目の前の試合のことだけを考えていました。でも気づいたら準決勝、決勝まで来ていた。チームも「行くしかない」という雰囲気になり、優勝が決まったときは目の前の光景が全部、輝いて見えました。
勝利に向け、特にベンチに入らなかった3年生や下級生が、進んで練習をサポートしてくれました。そんな気持ち、行動が実を結んだように思います。
―3度甲子園に出場しました。どんな場所でしょう
ここで野球をするために来た、と思わせてくれる場所です。初の甲子園は2年春の選抜。数々の偉大な選手がプレーしてきた重みなのか、独特な雰囲気があり、1打席目は心臓が止まりそうなほど緊張しました。昨夏は、そういう緊張ではなく「負けたら終わり」「先輩を超えなくては」という重圧を感じていました。
―そんななかで自らの支えにしたものはありますか
春夏の甲子園に出場するたびに、中学時代の監督が「おまえはセンスがないから持っていろ」とくれた扇子です。甲子園で絶対に打たなくてはならない場面では、扇子を握ってから打席に向かいました。今も、思い出の品として練習カバンに入れています。
―プロを意識し始めた時期やきっかけは
2年秋に新チームになってからです。自分に技術や体力がつき、活躍できるようになってきた。中学のころからプロ野球選手に憧れる気持ちはありましたが、まずは結果を出して名前を全国に知らしめようと考えていたので1、2年の時は甲子園しか目指していませんでした。
―プロと高校野球の違いは
プロは自主性を求められます。監督に言われなくても、考えて行動する自立心が必要で、自分に厳しくないとできません。一方で、仲間の大切さは高校野球で学びました。仲間と一緒にご飯を食べ、一緒の部屋で寝て、一緒に練習し怒られたことが、本当にいい思い出です。戻りたいと思う時があります。
―悔いのない高校野球生活でしたね
いや、甲子園では本塁打を打てなかった。不思議なことに中学2年の時、花咲徳栄のユニホームを着て甲子園で右中間に本塁打を放つ夢を見ました。口に出すと実現しない気がして、誰にも話しませんでした。そうしたら、決勝の五回の打席が全く同じ光景だったのです。ただ、現実はフェンスを超えることはなく三塁打。あそこで打ち切れなかったことが心残りですね。
―最後に、100回大会に挑む球児たちにメッセージを
悔いを残さないよう、練習できるときにとにかく練習することです。そして、先輩たちが作り上げてきた99回分の高校野球の歴史や、夏にかけてきた思いをしっかりとかみしめてプレーしてほしいです。(構成=山口啓太)
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にしかわ・まなや 1999年生まれ、大阪府堺市出身。高校2年の春夏と3年夏の3度甲子園に出場し、昨夏に県勢で初めて夏の全国制覇を果たした。埼玉西武ライオンズにドラフト2位で入団。180センチ、78キロ。右投げ左打ち。