猛暑の中、運動部活動でも熱中症には万全の注意を払いたい。気温が高い時間帯の活動を避けるのが望ましいが、近年におきた重大事故の調査報告書などからは、その他にも具体的な対策が読み取れる。 暑さ「災害レベル」 少なくとも8月上旬までは高温状態 「疲れた」は熱中症のサイン、子のSOS見逃さないで ①肥満気味の生徒のトレーニングは軽めに 2015年8月14日、神奈川県の私立高柔道部の1年生男子が熱中症で倒れた。午後3時ごろ、他の部員と学校近くの寮から約1・5キロ離れた川の土手までジョギングで行き、ダッシュのトレーニングを始めた時だった。1本目で座り込み、寮に一人で帰るよう指示され、その途中で倒れ、2日後に亡くなった。 学校が設けた調査委員会の報告書では、部員の体格差、能力への配慮に欠ける練習メニューが指摘されている。1年生男子は体重120キロ以上の重量級だったが、軽量級の部員と同じように走り、多大な負荷が体にかかっていた。 16年8月16日には、奈良県生駒市の公立中の男子ハンドボール部の1年生が倒れた。午前8時35分に始まった練習で全員が35分間の持久走を課された。ランニングを終えた時、1年生は倒れた。自力で立つことも水を飲むこともできず、救急搬送され、翌日に死亡した。 1年生は肥満気味だった。生駒市の調査委員会の報告書でも「生徒個人の体格・体力に応じた配慮が不足していた」と指摘した。 日本スポーツ協会の「スポーツ活動中の熱中症予防ガイドブック」によると、学校で起きた熱中症死亡事故のうち、7割は肥満度20%以上の人に起きている。 肥満度の高い生徒は、激しい運動ではただでさえ大きな負荷がかかる。練習メニューを軽くすることは、決して不公平ではない。 ②給水から練習、試合への復帰をせかさない 2017年8月9日、群馬県伊勢崎市立中の駅伝の練習中に、1年生女子が熱中症で意識を失った。1週間後に意識を取り戻したが、足に後遺症を負った。午前7時13分から15分間走り、1、2分の休憩後、7時半からまた15分間のランニング。1年生女子はゴールライン付近で、ひざから倒れた。 伊勢崎市の調査報告書は、「休憩を1分で済ませ、何口か飲んだらすぐ戻るように」という指導がなされ、給水時間が十分ではなかったことを指摘している。給水からの復帰をせかしてはいけない。 ③「見守り専従」の確保を 13年8月8日、大阪府の私立高アメリカンフットボール部の練習試合中、3年生が突然倒れた。日陰で休んだが、まもなく嘔吐(おうと)が始まった。搬送された病院で、2日後に亡くなった。ほぼ5分ごとに水分補給の時間がとられていたが、事故は起こってしまった。 その後、この部では「選手がベンチに戻ってきても戦術面の話しかせず、選手の体調の異変に気づける態勢になかった」という反省から、副顧問の教諭が試合中、選手に異変がないかチェック。気になる選手には声をかけ、反応を確かめる役割に徹することにした。 生徒が給水時間にきちんと水を飲んでいるか、日陰に入って休んでいるか、防具がある競技は休憩時間にそれをはずしているか。そういったことへの目配りに専従する役を置きたい。 ④意見や訴えが言いにくい雰囲気をつくらない 生駒市の事故では、報告書にこんな記述もある。 「(亡くなった1年生が)顧問について家族に『お母さんの千倍も怖い』と言っていた」「当日のランニングについて、他の部員からの聞き取りで『給水はダメじゃないけど飲める雰囲気ではなかった』というコメントがあった」 生徒たちにとって、顧問は従順になるしかない存在だった。意見を言える対象ではなく、体に異常を感じても、伝えられなかった可能性がある。 「もうできない」「仲間の様子がおかしい」という訴えが届くよう、強圧的な指導を避け、普段から生徒とコミュニケーションがとれる指導姿勢をとることが、事故防止につながる。(編集委員・中小路徹) |
スポーツで熱中症、落とし穴どこに 重大事故を読み解く
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