政府は24日、新たな「過労死防止大綱」を閣議決定した。過労死をなくすための施策の土台となるもので、2015年の策定から初めての改定だ。労働実態を特別に調査する業種にメディアと建設を追加したことと、「勤務間インターバル制度」の導入企業の割合を20年までに10%以上とする数値目標を掲げたことが目玉となる。
特別調査は過労死や長時間労働が多い一部の業種が対象で、企業や働き手にアンケートなどを実施。長時間労働の理由などを分析して対策に生かしていく。自動車運転、教職員、IT、外食、医療の5業種が指定されていたが、新たに報道機関や広告会社などのメディアと建設が加わった。
メディアでは電通の過労自殺やNHK記者の過労死、建設では新国立競技場の現場監督の過労自殺などが問題となったことから、詳しい調査が必要だと判断した。
勤務間インターバル制度は、仕事を終えてから次に働き始めるまでに一定の休息時間を確保するものだ。過労を防ぐ手段になるとして、労働界や過労死遺族らが普及の必要性を訴えてきたが、厚生労働省の17年の調査では導入企業は1・4%にとどまる。6月に成立した働き方改革関連法で、来年4月から全企業に導入の努力義務が課される。
加藤勝信厚労相は24日の閣議後会見で「今後も過労死ゼロの実現に向けて全力で取り組む」と述べた。(田中美保)
過労死防止大綱の主な改定内容
【数値目標】
・終業と始業の間に一定の休息時間を確保する「勤務間インターバル制度」の導入企業の割合
2017年:1.4%
→20年までに10%以上に
・勤務間インターバル制度を知らない企業の割合
17年:37.3%
→20年までに20%未満に
・仕事上の不安・悩み・ストレスの相談先が職場にある働き手の割合
16年:71.2%
→22年までに90%以上に
【重点対策】
特別な調査研究の対象業種に、従来の自動車運転、教職員、IT、外食、医療に加え、建設、メディアを追加