オウム真理教元幹部6人の死刑が26日に執行されたことを受けて、「地下鉄サリン事件被害者の会」代表世話人の高橋シズヱさん(71)は東京都内で記者会見を開いた。「13人執行され、刑事司法としては終わったことになるのかもしれないが、後遺症を抱えた人もいる。被害は続いているという状況でつらい」と語った。
死刑確定13人全員の執行終了 オウム真理教の元幹部
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【トピックス】オウム事件、死刑執行までの流れ
1995年の地下鉄サリン事件で、地下鉄霞ケ関駅の助役だった夫・一正さん(当時50)がサリンが入っていた袋を片づけて亡くなった。被害者の会の代表となり、被害者の思いを会見や手記集で発信してきた。
今年公開された公安調査庁の特設サイトには、夫のカルテと死体検案書の写真を載せ、「23年前の事件を現実のものとしてとらえ、被害が続いていることを実感してほしい」と訴えた。
20日前の7月6日。松本智津夫・元死刑囚ら7人が執行された際は、「その時が来たなと。それだけしか思いはありません」と語っていた。26日は、テレビで執行を知った。「6人と聞いて、動揺、緊張しました」
教団が起こした事件の刑事裁判が終結したことを受けて3月、死刑囚との面会を法務省に求めたが、かなわなかった。「裁判で全て話したから、会って話すことはない」とする死刑囚もいたというが、高橋さんは「(裁判で話したことを)遺族がどう受け取ったか、を伝えたかった」という。
また、地下鉄サリン事件のほかの被害者に電話し、受け止めを聞いたところ、娘を失った被害者は「これでやっと娘の敵をとれた」、後遺症がある被害者は「死刑が確定していたので、特別に言うことはない」と話したと明かした。
「坂本弁護士と家族を救う全国弁護士の会」事務局長の影山秀人弁護士は「事件から学んだことを社会に生かしていく必要がある。死刑執行で、当事者が話していない真相を語る機会が失われたが、この事件をおしまいにしてはいけない」と話した。(吉沢英将、岡本玄、豊岡亮)