28日の宮城大会決勝で、仙台育英が7―0で古川工を破り、2年連続27回目の甲子園出場を決めた。小雨の降る楽天生命パークは、頂点に立った仙台育英の歓喜に包まれ、67チーム71校による13日間の熱戦が幕を閉じた。
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「野球ができるのは支える人がいるから」
2点リードの六回表、仙台育英は無死満塁のピンチを迎えた。一打逆転。ブルペンで大栄陽斗君(2年)の球を受けていた阿部大夢君(3年)は、一緒にベンチに駆けつけ、予想外の展開にうなった。だが、大栄君とは中学からバッテリーを組み、ピンチは何度も乗り越えてきた。
「とにかくアウトを取ろう」
リリーフでの登板にそう声を掛け、マスクを手にグラウンドへ駆けだした。
初球。「ストライクを狙われる」と、あえてボールに外した。大栄君の制球力は知り抜いている。直球とスライダーでカウントを稼ぎ、3番打者を見逃し三振。4番打者にも外角低めに直球が決まり、見逃し三振を奪った。最後はスライダーで内野フライに。「流れを止められた」。笑顔でベンチへ戻り、仲間に囲まれた。
主将として迎えた昨年末、チームに不祥事が発覚した。監督は引責辞任し、新しく就任した須江航監督に「自分のために野球をすることはない」と言われて、思った。ただ勝てばいいわけじゃない。試合をできることが幸せなのだと考えなければ。「支えてくれる人のために野球をしよう」
対外試合を禁じられた6カ月間は、紅白戦を100試合以上繰り返した。今大会が久しぶりの公式戦。チームは思うように打てなかった。準決勝の朝、思い切り力を出してほしいと、メンバー全員のLINEに思いを送った。「三振オッケー、2ゴロ上等」。仲間は「よっしゃー」と返してくれた。決勝は12本の安打が飛び出した。
九回表、三ゴロで併殺が決まると、マスクを外してマウンドに駆け寄り、人さし指を突き上げた。もみくちゃになりながら、お世話になった先生たちの顔が浮かんだ。「恩返しをするには、甲子園でないとダメだった。あの6カ月間は無駄じゃなかった」
試合終了の礼ではチームの誰よりも長く頭を下げ続けた。主将になってから続けてきた癖だ。「野球ができるのは相手がいるから。支えてくれる人がいるから」
真新しい優勝旗を手に、いよいよ甲子園へ行く。「宮城の代表としてステージに立たせてもらっている。それを忘れずに1戦1戦勝っていきたい」(窪小谷菜月)