(20日、高校野球宮城大会、東北8―1東北学院榴ケ岡)
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4点を追う三回、無死一塁。東北学院榴ケ岡の山中海渡君(2年)は、仮面のような黒いフェースガードをつけ、打席に入った。
「後ろにつなげよう」と思っていたのに、焦って力み、変化球に思わず手が出た。打球は詰まり、三塁へ。だが相手のエラーで一塁走者が三塁に進み、次打者の内野ゴロの間に生還。それがこの日、チーム唯一の得点になった。
昨年夏、1年生で4番を任されたのに、雰囲気にのまれてヒットを1本しか打てなかった。走り込みやティーバッティングを重ねて体重を8キロ増やし、今春の地区大会では本塁打を放って県大会進出を決めた。
夏に向けて自信を深めていた矢先、6月末の練習で送球が鼻を直撃した。痛みにうずくまって鼻に手をやると、大きく左に曲がっていた。骨が折れて腫れ、視界の下半分は見えない。「もう夏は間に合わないかな」と、ぼんやり思った。
1週間ほど後、やっと練習に戻った。久しぶりに振ったバットは「違和感しかなかった」。そんな時、同学年の室井賢生君が励ましてくれた。「お前はチームに絶対必要な存在だ。無理せず、ゆっくりでいいから夏に間に合わせよう」
その一言で焦りは消えた。時間を見つけてはバットを振り、感覚を取り戻した。しかし、宮城大会の直前、今度は室井君がけがでベンチから外れた。
「あいつの分も俺ががんばろう」と誓った初戦は、2安打1打点。盗塁も犠打も決めて競り勝った。勢いに乗って挑んだこの日は、三回の左翼手の守備でワンバウンドで捕球すると、二塁を狙う東北の選手を好返球で刺した。それでも、強豪の壁は厚かった。「あそこでヒットを打っていたら、チームを勢いづけられたのに。九回までやりたかった」と悔やんだ。
夏が終われば、室井君が戻ってくる。「来年こそは自分がチームを引っ張って甲子園へ行く」と前を向いた。=仙台市民(窪小谷菜月)