2020年東京五輪・パラリンピックの暑さ対策として、政府・与党内で検討されている「サマータイム」(夏時間)導入案に、IT業界などに戸惑いが広がっている。もし実行に移され、標準時が1~2時間早められると、コンピューターシステムの大規模改修などが必要になるからだ。ただでさえ忙しいエンジニアにとっては「働き方改革」に逆行する事態にもなりかねない。
「やだやだ……」
中小企業向けの会計ソフトを手がけるITベンチャー「freee(フリー)」(東京)の社内SNSでは、政府のサマータイム検討方針が報じられた6日、エンジニアや営業担当者らが疑問を投げかける投稿が相次いだ。
もしサマータイムが導入されると、同社が中小企業に提供している人事労務システムを改修しなければならず、問題なく動くかどうかのテストにも膨大な時間を費やされることになる。サマータイムによって労働法制も変われば、その対応も迫られる。
エンジニアの浅越光一さんは「対応に1カ月かかるのか、半年かかるのか、やってみないとわからない。その対応にかける時間があれば、新サービスの開発がどれほどできるかと思うと、もったいない……」とため息をつく。
サマータイム導入は、日付や時刻に関わるすべてのシステムに影響する。システムが正しく動くかどうかのテストも欠かせない。西暦2000年を迎えた際、コンピューターが1900年と間違えて誤作動する恐れがあった「2000年問題」で、多くのエンジニアが泊まり込みで対応を迫られた苦い記憶が関係者には残る。
サマータイム初日は1日が24時間よりも短くなるため、「日付変更の時期によって金利計算が変わるなどの影響を確認する必要がある」(日本IBM)。大半の企業は、作業量自体も見通せていないとみられる。
もともと、平成の次の新しい元…