(12日、高校野球 高知商12―6慶応)
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自慢の攻撃力で慶応を破り、25年ぶりに3回戦進出を決めた高知商。喜ぶ仲間たちの陰で、乗松龍之介捕手(3年)はうつむいていた。「めっちゃ恥ずかしかったです」
九回2死一塁。慶応の大川が4球目をとらえた打球は、乗松の頭上へ。「やった! ウィニングボールをゲットや」と思ってマスクを外して捕球体勢に入ったが、高々と舞い上がった飛球は一塁から三塁方向への浜風に流される。慣れないナイターでの試合ということもあり、「見失った」。ミットにも触れられずに、ボールはファウルグラウンドにぽとりと落ちた。
一瞬静まり返った甲子園が沸き返る。救われた大川裕也(3年)は「落としてくれ、と願っていた」とホッとした表情だ。仕切り直しの6球目。またも同じような飛球が上がった。弱気になっていた乗松の心情は「またかよ。やばいなー」。それでも、風は計算済みだ。落下地点に入って捕もうとした時だった。今度は大川が打ち終わりに置いたバットにつまずいた。「えっ、なんでここに」と、足元が気になって落球してしまった。
小学4年から始めた捕手のポジション。こんなに高く上がった飛球は2球とも経験がなかった。すぐにマウンドの北代真二郎投手のもとへ走って、「ごめん、ごめん」と顔の前に右手を立てた。一方、2度も救われた大川は肩の力が抜けた様子。直後の球をきれいにとらえて、左前安打で好機を広げた。「なんとかつなげられてよかったです」
結局、次打者の下山悠介(3年)の打球は少し前方の一塁へのファウルフライとなり、試合は終了。乗松は「落とせ、とちょっと思ったんですけど、勝ててよかった。明日から特訓します」と照れ笑いを浮かべた。(山口裕起)