2日に閉幕したジャカルタ・アジア大会で、開催国インドネシアは目標を大きく上回る31個の金メダルを獲得し、多くの国民が「大会成功」に沸いている。来年4月の大統領選で再選をめざすジョコ大統領は、開会式にバイクで乗り付ける演出をするなど大会に積極的に関わり、実績作りで弾みを付けた形だ。
「いま、ロンボク島にいます。閉会式に出席できなくてごめんなさい」
ジャカルタのメイン競技場で2日夜にあった閉会式に、ジョコ氏は大型スクリーンに映像で登場した。赤のジャケット姿で、仮設テントを背に、大勢の被災者に囲まれていた。
同島では7月29日~8月19日、マグニチュード(M)6を超える大地震が4回発生。国家防災庁によると、計560人が死亡し、39万人以上が避難する。
そんな状況で開催されたアジア大会。ジョコ氏は、開会式の演出に加え、応援のため競技場に出向いた。自身のツイッターも大会関連の投稿が多く、「被災者たちを無視している」との批判が起きていた。
このためジョコ氏は、テレビ中継で多くの国民が注目する閉会式のこの日、同島を訪問したとみられる。復興への姿勢を示す一方、「国民に成功を感謝する」と述べて大会成功の実績のアピールも怠らなかった。
チケットの発券ミスなどトラブルが絶えなかったが、インドネシアは金メダルがジョコ氏が当初掲げた16個を大きく上回り、総合4位に入る大活躍。「インドネシアは誇らしい」「大成功」……。3日の地元各紙やテレビはトップニュースで大絶賛。「アジア大会の勝者はジョコ氏だ」と論評するメディアもあった。
ライバル陣営も傍観してはいない。金メダルのうち計14個は、インドネシアの武術「プンチャック・シラット」で獲得した。この競技団体会長はもう一人の大統領候補のプラボウォ氏。陣営幹部は「躍進の原動力の一つ」とPRしている。(ジャカルタ=野上英文)