米国で8月上旬に開催された「カル・リプケン12歳以下世界少年野球大会」(硬式)で、日本代表が3連覇した。今大会からチームを率いたのが元巨人の元木大介さん(46)だ。2005年に現役を引退して以来、解説者やタレントとしてテレビなどで明るいキャラクターを演じる元木さんだが、グラウンドでは厳しい一面も見せる「野球人」になっていた。
大会は米国のリーグが主催しており、今年は米国10チームと日本を含めた8カ国で争われた。日本は故星野仙一さんが遠征費用などを負担することで07年から参加している。チームはボーイズ、ヤングの両リーグの選手で構成されている。元木さんは2年前、星野さんから「監督をやらんか?」と誘われたという。今回、監督を打診され、すぐに引き受けた。
大事にしたのは技術ではなく、声だった。攻撃時に走者に牽制(けんせい)球が投げられれば、全員で「バック!」と叫ぶことを決めた。「巨人の若い頃に教わった。試合に集中して状況を把握しないと声は出せない。僕はヤジも言ったけどね。配球も確認して、終盤の代打の準備もできる。強いチームは声が出るよ」と語った。
試合は6イニング制で、優勝までに6試合を戦った。投手は球数制限があり、全国から選んだベンチ入りメンバー15人のうち12人が投手兼任選手。選手の性格、特性を見極め、ほぼ毎試合、全員を起用した。最後の2試合は韓国に5―0で完封勝ちし、決勝はバージニア(米国)に6―2で逆転勝ちした。「ノックのときから厳しくした。ミスは出るものだけど、悪送球したらそれで負けることもあるとプレッシャーをかけた」
メンバーには元木さんの長男翔大(しょうた)君も選出されていた。「選ばれたときに『全員が監督がお父さんだから選ばれたと思っている。だから結果を出すしかない』と言ったよ。野球を続ける限り親の名前はついてくる。乗り越えてもらわないと」と話した。翔大君は大会の最優秀選手(MVP)に選ばれた。「MVPでまた周囲から勘違いされたら困るけど。初めてよくやったねと握手した」と父親の顔ものぞかせた。
「5月にメンバー選考してから寝られない日もあったが、ほっとしている。協力してくれた選手の親にも感謝。選手もこの大会の思い出を大事にしてほしい」と元木さん。今年、元プロが大学野球、高校野球の指導をするための資格回復の研修を受ける予定という。「高校野球の指導者を考えてはいないけど、今後もリプケンの大会をよりいいものにできたらと思う」と指導熱を上昇させていた。(坂名信行)