西日本豪雨で死者が出た14府県計40市町の首長に対し、災害による犠牲者を減らすため必要なことについて朝日新聞がアンケートしたところ、住民の避難への意識を変えてもらう必要があるとの回答が9割にのぼった。過去の災害では行政が避難を促す時期や伝達方法が不適切だったため、被害が拡大したケースもある。今回の豪雨による被害を踏まえ、避難勧告・指示などを出す基準の見直しを検討している首長も半数超。効果的な避難のあり方を模索していることがうかがえる結果となった。
「自分は大丈夫」住民避難の壁に どう促す?自治体難題
台風接近どうする? 備え確認し、早めに避難を
災害INFO そのときどうする
警察庁によると、今回の豪雨による死者は3日時点で227人。このうち自治体が関連を確認中の6人を除き、死者が出た40市町の首長にアンケートし、全員から回答があった。
住民が避難をためらう要因を複数回答で聞くと、9割の36市町長が「『自分は大丈夫』などとする危機感の欠如」を選んだ。災害などの非常事態を過小評価する「正常性バイアス」と呼ばれる心理により、判断に迷うケースが多いとみていることがわかった。次に多いのは、「避難情報の意味を十分に理解していない」(22市町長)だった。
一方、行政側にも課題があり、半数超の21市町長が避難情報の発表基準・マニュアルの見直しを「検討している」と回答した。「精度の高い情報を前倒しで提供」(岡原文彰・愛媛県宇和島市長)、「早めに発令できるよう検討する必要がある」(小林嘉文・岡山県笠岡市長)といった声があがった。
気象庁による気象警報、国や都道府県による洪水予報など多様な情報について、15市町長が「整理の検討が必要」と答えた。広島県福山市の枝広直幹(なおき)市長は「情報が詳細・高度になりすぎ、住民に危機感が正しく伝わっていない恐れがある」と指摘する。
今後の対策について14市町長が「堤防の補強や砂防ダムの建設」▽9市長が「避難情報が正確に伝わる仕組み作りなど」▽7市町長が「実践的な避難訓練」を挙げた。「確実に避難を行えるよう地域コミュニティーの活性化を図る必要がある」(松井一実・広島市長)との声もあった。
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〈避難情報〉 災害対策基本法に基づき、各市町村長が発令。支援が必要な人に早めの避難を促す「避難準備・高齢者等避難開始」▽危険度が高まり、住民に避難を要請する「避難勧告」▽差し迫った危険があり、急いで避難するよう求める「避難指示」の3種類がある。ただ避難指示も強制力はない。発表基準や伝達方法は、内閣府のガイドラインがあるものの、市町村によって異なる。