大阪湾の人工島にある関西空港では、孤立した利用客や職員ら約5千人の救助が5日早朝から始まった。海上からは臨時の高速船で、陸路ではタンカーが衝突した関空連絡橋の一部通行が緊急措置として認められ、バス輸送で進めた。ただ、空港の再開の見通しは立たないままだ。
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関空は4日午後、滑走路や駐機場などが広範囲に冠水し、最大50センチまでつかった。一夜明けても所々に水がたまったままで、旅客ターミナルの地下1階部分も80センチほど浸水していた。
運営する関西エアポートによると、ターミナル施設に隣接する同社のビルでは外壁のガラスの破損など、高潮による被害が相次いで見つかった。浸水した誘導車の安全点検は始まったが、同社の広報担当者は「滑走路の運用再開は未定」と説明している。
関空と対岸を結ぶ連絡橋に衝突したタンカーは5日未明、衝突現場から400メートル南の海上に曳航(えいこう)され、国の運輸安全委員会が事故原因を調べる方針だ。
連絡橋にはJRと南海電鉄の線路の両側に3車線ずつの道路が並走しており、タンカーが衝突した下り線は橋桁ごと大規模にずれて損傷した。管理する西日本高速道路(NEXCO西日本)は「反対側の上り線の路面に大きな損傷はない」として、5日午前0時40分ごろから緊急車両の通行を許可。関西エアポートは午前8時から、取り残された人たちを対岸に陸路で運ぶバスの運行を始めた。
NEXCO西日本は、救助に向かう緊急車両の通行を上り線に限って認めたが、今後改めて上り線の詳しい安全点検も実施する予定で、「上りの補修が必要になると工事は数カ月単位になってしまう」(同社の広報担当者)と説明する。
連絡橋の線路の破損状況は補修を担っているJR西日本が今後調べる。5日朝の時点では確認できていないという。同社と南海電鉄の担当者は、運休期間は「当面の間」と話す。
関空に拠点を置く格安航空会社(LCC)のピーチアビエーションは、成田、仙台、ソウルなど国内外18都市に関空発着便を就航している。連絡橋の被害でアクセスの復旧に時間がかかる見通しのため、「訪日外国人の客足にも影響が出るだろう。滑走路などの被害状況もはっきりしないので、経営への影響は現時点で見通せない」(広報)という。
関空発着のLCCのジェットスターは、5日に関空に発着する全16便の欠航を決めた。LCCは機材を効率的に使うため、路線や発着時刻を決めており、関空が使えないと関空以外の路線にも影響が出ることがある。主力拠点である成田を発着する新千歳、福岡便に影響が出ないよう、機材繰りを調整しているという。
日本航空は関空発着の予約客の対応に追われている。国際線利用客は大阪(伊丹)空港経由で成田から出国する方向で座席確保に努めているが、「成田への振り替えを当面続けるとしても、関空の正常化がいつになるのか次第で、年末年始の航空需要に影響が出るかもしれない」(広報)と懸念する。
全日本空輸は、利用している関空第1ターミナルが閉鎖中で、運航再開の見通しが立たない状況に気をもむ。「関空側に問い合わせをしているが、なかなか情報が入ってこない」(広報)