台風21号で冠水した関西空港が、3日ぶりに格安航空会社(LCC)など一部で営業を再開した。ただ、関空島への連絡橋は鉄道が復旧しておらず、マイカーも通行止めのまま。利用客は対岸の駅からバスで続々と空港に向かった。
午前9時ごろ、大阪府泉佐野市の南海泉佐野駅前のバス乗り場には長い列ができていた。関空に出勤する職員や、混雑を想定して早めに空港に到着しようとする利用客らだ。
大阪府阪南市の会社員伊藤悠子さん(30)は午後3時45分発の那覇行きに乗る。自宅から普段は電車で40分ほどだが、渋滞が心配で午前8時すぎに自宅を出た。夏休みの旅行で東京と沖縄の友人と現地で合流する。「昨夜までほとんどあきらめて荷造りもやめていた。再開はありがたい」と話した。
大阪府富田林市の社会人学生、古藤行敏さん(60)は東京都内で大学の講義を受けるため午後3時5分発の日本航空の羽田行きを前日夜に予約した。空港閉鎖から3日での再開に「もう飛ばせるなんて信じられない。頑張って飛ばすのなら、搭乗して応援したい」と話した。
第2ターミナルビルの店舗も営業再開に追われた。カフェバー「プロント」は通常24時間営業だが、この日は運航ダイヤにあわせて開店。スタッフは「供給がストップしていたので、生鮮品は出せない。今日はドリンク中心のメニュー」。午前10時の開店直後に訪れた女性客は「空港があんな状態だったので、飲食は無理と思っていた。喫茶ができる場所があって良かった」と話した。
LCCのピーチ・アビエーションは、第1便となる午前11時50分発新潟行きのチェックイン受け付けを午前9時50分から始めた。通常の国内線チェックインは出発の90分前からだが、トラブル対策など万全を期すため、2時間前に前倒しした。同社の井上慎一CEO(最高経営責任者)もターミナルを訪れ、「できるだけ早く、国内線の全便と国際線の再開を目指したい」と報道陣に話した。(大隈崇、中川竜児、坂東慎一郎)