7日告示された自民党総裁選に立候補を届け出た、安倍晋三首相と石破茂・元幹事長。その生い立ちと政治キャリアからは、2人の政治家の共通点と違いが浮かび上がる。
特集「安倍×石破 二人が見る日本―自民党総裁選2018」
安倍氏 退陣も経験、長期政権維持
安倍氏は1954年、東京生まれ。父は後に外相、自民党幹事長を務めた安倍晋太郎氏、母は岸信介元首相の娘・洋子さんという政治一族の次男で、幼い頃から政治家を志した。
小学校から大学まで東京の成蹊学園で過ごし、神戸製鋼所で3年半の会社員生活を経て父・晋太郎氏の秘書に転じた。晋太郎氏が亡くなると、93年の衆院選で初当選した。
2000年に森喜朗内閣の官房副長官に登用され、小泉純一郎内閣まで3年務めた。拉致問題への取り組みで注目され、03年に自民党幹事長、05年には官房長官に。06年に小泉氏の後を継ぎ、戦後生まれで初、戦後最年少の52歳で首相になった。
だが、一度目の首相の座は、不本意な結末を迎えた。閣僚不祥事や年金問題などで支持が急落し、07年7月の参院選で大敗。続投したが、9月に病気を理由に退陣した。約1年での突然の退陣が、09年の自民党下野の引き金を引いたと党内で批判を浴びた。
自民党が野党だった12年に総裁選に再挑戦。地方票で石破氏を下回ったが、議員票のみで決まる2回目の投票で逆転し、総裁に返り咲いた。現在、好調な経済を推進力に、第1次内閣と通算で戦後歴代単独3位の長期政権を維持する。
政策や思想の面で岸氏の影響を強く受ける。岸氏が日米安全保障条約改定に政治生命をかけたように、首相は集団的自衛権の行使を容認する安全保障関連法を成立させた。
そして今、岸氏が成しえなかった憲法改正を掲げて3選に挑む。
趣味はゴルフ。夏休みは知人らを招いて別荘で連日興じるほか、政治のツールとしても重視する。昨年の訪米時以後、トランプ大統領と通算3回プレーして蜜月ぶりをアピールした。(小野甲太郎)
石破氏 復党後、三たび立候補
石破氏は1957年生まれで、鳥取出身。鳥取大学教育学部付属中学、慶応義塾高校、慶応大を経て旧三井銀行に入行。鳥取県知事、参院議員などを務めた父・二朗氏の死後、二朗氏と親交が深かった田中角栄元首相に背中を押されて、政治家の道へ進んだ。
田中派の職員を経て、86年7月に旧鳥取全県区で初当選し、以後、連続当選11回を果たす。
政治家としての節目は93年。衆院に小選挙区制を導入する政治改革をめぐり、宮沢内閣の不信任案に賛成した。無所属で衆院選を戦い、後に離党。新生党、新進党に所属した。「青い鳥はいない。自民党から変えていかなければならないと思った。挫折感は大きかった」と振り返る。
97年、自民に復党し、2002年に防衛庁長官で初入閣。「政治的に対立する立場だった」とする小泉純一郎元首相が自らを登用してくれたことに、「人事はかくあらねばならないと思った」と言う。防衛相も務め、「国防族」の印象が強いが、本人は「本業は農林水産」と自負する。
政治家になる前、渡辺美智雄元副総理の講演で聴いた「政治家の使命は、勇気と真心をもって真実を語ること」が信条だ。「師」と仰ぐ田中氏から受けた「選挙は歩いた家の数、握った手の数しか票は出ない」との教えを選挙哲学とする。
08年、12年の党総裁選に立候補。第2次安倍政権では幹事長、地方創生相を務め、15年9月に「水月会」(石破派)を旗揚げした。
鉄道やプラモデル、キャンディーズなど70年代アイドルに一家言持ち、クラシック音楽も好む。議員会館の自室は、防衛関係の書籍が並び、ミニ軍事図書館の様相を見せる。料理、洗濯も好きで、自作のカレーに自信を持つ。妻・佳子氏は大学の同級生で、「愛妻家」を自任する。(岩尾真宏)
2人の所見の要旨(自民党ホームページで公表)
【安倍晋三氏】
●日本を取り戻す
三本の矢で経済は10%以上成長。若者の就職率は過去最高水準。各国首脳と深い信頼を構築。平和安全法制を成立
●希望にあふれ、誇りある日本を
▽三本の矢でデフレ完全脱却を実現する。戦後最大のGDP600兆円を実現する▽教育無償化を成し遂げる。希望出生率1・8、介護離職ゼロを目指す▽農林水産業の改革などで地方創生を展開する▽北朝鮮との国交正常化を目指す。日ロ平和条約を締結する▽自衛隊明記など4項目につき次の国会に憲法改正案を提出できるよう取り組み、早期発議を目指す
【石破茂氏】
●日本創生戦略――石破ビジョン
①ポストアベノミクスへの展開②個性と自立性を発揮し、地方で成長と豊かさを実感できる真の地方創生の実現③より人を幸福にする福祉社会の実現④人生100年時代の新たな社会の創生⑤自立精神に富み安心・安全な国の構築
●WEBで石破茂をもっと知ろう!
▽地方遊説ビデオ 全国を歩き、たくさんの人々と語らい、お話をうかがってきた▽すべての都道府県を語る47本のメッセージ動画▽石破茂の夢 未来の日本、こんな国に。イラストや小説で書いてもらった