6日未明に北海道で起きた地震後、北海道電力が全域での大規模停電(ブラックアウト)を防ぐために、一部地域を強制的に停電させて電力需要を減らす措置を3回試みていたことがわかった。最初の2回は全域停電の回避に一定の効果があったが、地震で損傷した火力発電所の停止直後に実施した3回目は不十分で、ブラックアウトにつながったとみられる。
経済産業省と国の電力広域的運営推進機関(広域機関)が19日、地震直後の6日午前3時8分からブラックアウト(同25分)に至るまでの17分間の道内の電力需給バランスについて、北電などから得たデータに基づき、概要を公表した。
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北海道で震度7、道内の被害状況は
地震直後、道内最大の火力で震源に近い苫東厚真(とまとうあつま)発電所(厚真町)の2号機、4号機が地震の揺れで自動停止した。これで地震前の電力供給約310万キロワットの4割弱が一気に失われた。
電気はためられないため、その時々に使う量に合わせて発電所の出力を細かく調整する必要がある。需要に対して供給が少ないと需給のバランスが崩れ、発電機が壊れるなどの影響が出る。最悪の場合、ブラックアウトにつながる。
需給のバランスがとれている時、北海道を含む東日本では、発電機の回転速度に当たる周波数が50ヘルツで推移(西日本は60ヘルツ)する。電気の需要が増えると周波数は下がり、供給が増えると上がる。
苫東厚真の2基の停止で北電の供給力は急速に落ち、周波数は平常時にはあり得ない46・13ヘルツまで一気に下がった。道内すべての風力発電所と、水力発電所の一部も止まった。
北電はすぐに1度目の強制停電を発動。本州からの電力融通(最大約60万キロワット)も受けて3時9分にいったん、需給バランスが回復した。
ただ、それは2分間ほどしかもたなかった。「夜中の地震に驚いて電灯やテレビをつける人が多く、地震から数分で需要が急増した」(経産省担当者)とみられる。同11分からは、再び需要が供給力を上回り、周波数が低下。ギャップを埋めるため、苫東厚真以外の火力発電所が出力を上げ、同18分過ぎには再び、需給バランスはおおむね回復した。
ところが、同21分から苫東厚真で唯一発電を続けていた1号機の出力が低下。「ボイラーの配管が損傷し、蒸気が漏れたため」(同)とみられる。
これを受け、北電は同22分に2度目の強制停電を実施。需給バランスはやや改善したが、同25分には苫東厚真1号機が停止。北電は3度目の強制停電に踏み切ったものの、強制的に停電できる地域を「すべて使い切った」(広域機関)とみられ、需要を十分に減らせなかった。ほかの火力発電所や水力発電所もすべて止まり、北海道ほぼ全域のブラックアウトに陥った。
3回の強制停電の地域や規模はわかっていない。北電による強制停電が適切だったのかも含め、ブラックアウトに至った原因を検証するため、広域機関は研究者4人による第三者委員会の初会合を21日に開き、10月中に中間報告をまとめる。北電による人為的ミスの有無について、経産省は「把握していない」としつつ、「検証対象になる」と説明した。(関根慎一、桜井林太郎)