安倍晋三首相が連続3選した自民党総裁選から一夜明けた21日朝、現職首相相手に「善戦」した石破茂元幹事長の地元・鳥取を歩いた。鳥取市中心部の目抜き通り沿いにある石破事務所は熱気にあふれた前日とは一変し、ひっそりと静まりかえっていた。
特集「安倍×石破 二人が見る日本―自民党総裁選2018」
20日午後、この場所は高揚感に支配されていた。支援者ら約40人が駆けつけ、多くの報道陣も押しかけた。支援者らはテレビ中継を食い入るように見つめ、石破氏が投票する姿が映し出されると拍手が起きた。各都道府県の党員が投じた「地方票」で石破氏が健闘していると伝えられるたび、歓声も上がった。
開票後、安倍氏と握手しながら満面の笑みを浮かべる石破氏の姿がテレビ画面に映った。三木教立(のりたつ)事務局長は支援者を前にこう力を込めた。「次につなげるステップになりました!」
安倍首相の「1強」体制と言われる政治情勢に抗(あらが)った石破氏――。当初から劣勢が伝えられ、結果次第で「ポスト安倍」の命脈も絶たれかねないとの報道もあった。そんな石破氏の総裁選を、地元はどう見ているのか。期間中、大阪本社と鳥取総局の記者2人が取材した。
「鳥取初の総理大臣に」
石破氏の「源流」は、鳥取市中心部から南に車で約30分の山間部にあった。名産の花御所(はなごしょ)柿で知られる人口約190人の八頭(やず)町郡家(こおげ)殿地区。石破氏は大きな選挙がある度にこの地区に帰る。鳥取県知事や自治相を務めた父・二朗氏の墓前に近況を報告するためだ。
墓の文字をしたためたのは、二朗氏と懇意だった元首相の田中角栄氏。32年前、石破氏の政界入りを後押ししたのも田中氏だった。
今回の総裁選に立候補すると表明した3日後の8月13日、石破氏は墓参りに訪れた。今は親戚が住む二朗氏の生家の前には、帰郷を聞いた集落の約30人が集まった。生家に住む親戚は「石破氏が生家に立ち寄ると、いつも自然に人が集まる」と教えてくれた。
生家には、石破氏が2002年に防衛庁長官として初入閣した時の写真が飾られている。石破氏の斜め後ろには、官房副長官に就任した安倍氏の姿。10年後、2人は総裁選を戦い、勝った安倍氏は長期政権の道を開いた。そしてその6年後、2人は再び総裁の座を争って相まみえた。
先代から石破家を支援する平木…