2011年3月に発生した東日本大震災で、被災地に設置された仮設店舗の再建が進まない。最多時の事業者約2800のうち半数近くが仮設に残るが、国の撤去助成金は来年3月まで。自治体が設けた退去期限が迫っている。最も仮設店舗が多い岩手県陸前高田市が設けた期限は9月末で、店主らは新しい場所で再建に踏み切ったり、自腹で仮設に残ったり、さまざまな選択を迫られている。
「苦渋の決断。借金してまで新しい店は出せなかった」。陸前高田市の仮設商店街で居酒屋「わいわい」を営む太田明成さん(52)は肩を落とした。元々店があった市中心部で再起する予定だったが、1千万円の借金が必要だった。津波で全壊した店のローンも1千万円ほど残っていて、再建費用は捻出できなかった。
店はいま、市中心部から1・5キロほど離れた「高田大隅つどいの丘商店街」にある。12年6月にオープンした仮設商店街で、約3千平方メートルの敷地内にプレハブが建ち、11事業者が入っている。
再建を断念した太田さんは市から施設全体を譲り受け、ここに残ることを決めた。10月以降も営業を続けられるが、今後は自分で地代や維持管理費を支払い、最終的には施設撤去費用を負担する必要がある。
11事業者のうち、残るのは太田さんと復興支援団体の2事業者のみ。この商店街では6事業者が再建の道を選び、ほかは廃業や未定だという。
「本当は中心市街地に戻りたいけど、今はお金がない。仮設で耐えながら資金をためたい」。新たにテナントを募集して賃料を稼ぎながら、15年間かけて施設の撤去費約3千万円を積み立て、再建することを目標にしている。
退去期限のばす自治体も
仮設店舗が数多く設置された被…