神戸市の福祉施設で働く森下順子さん(59)は、仕事の後、六甲山地を1人で散歩するのが日課。
4月下旬。いつも通り山に入り、間もなく日が暮れようとするころだった。登山道のわきで、女性(28)が座り込んでいるのが見えた。
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女性は普段着で、ブーツをはいていた。変だな、と思いつつ通り過ぎたが、やはり気になった。振り返ると、そのまま倒れていた。
「大丈夫?」
すぐに戻って声をかけたが、表情はうつろ。返事もはっきりしない。「山から下りよう」「イノシシ出るから」。しつこく声をかけ、抱えながら下山した。
見ると娘と同じくらいの年頃。「朝から何も食べていない」と言うので、ひとまずふもとにある、知人の食堂に連れていった。
カウンターに並んで座り、ご飯を食べ始めると、女性はボロボロと泣き出した。
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