16日に開幕する「ルーベンス展」で、初めて音声ガイドに挑戦した長澤まさみさん=東京都内のスタジオ
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俳優の長澤まさみさんが「ルーベンス展――バロックの誕生」(東京・上野の国立西洋美術館で10月16日から。朝日新聞社など主催)で、初の音声ガイドに挑戦した。「朗読と違って感情を出しすぎないように、お客さんが聞き取りやすいように気をつけました。難しかったですが、美術好きなのでまた機会があればやってみたいです」と話した。
17世紀バロック美術の巨匠で神話や古典に題を取った、ルーベンスの大規模な展覧会。日本初公開の大作「聖アンデレの殉教」など約40点とともに、画家が影響を受けたイタリアの古代彫刻などもあわせて紹介する。
ペーテル・パウル・ルーベンス「聖アンデレの殉教」(1638~39年)マドリード、カルロス・デ・アンベレス財団 Fundacion Carlos de Amberes, Madrid
ペンで音を取りながら
「ペーテル・パウル・ルーベンス。『王の画家にして画家の王』。17世紀バロック美術を代表する芸術家です。あなたは、その本当の姿を知っていますか――」
16日に開幕する「ルーベンス展」で、初めて音声ガイドに挑戦した長澤まさみさん=東京都内のスタジオ
9月中旬、東京都内のスタジオで行われた収録で、長澤さんはゆったりと読み始めた。右手に持ったペンを上下に動かす。「音を取るためです。抑揚を付けすぎないよう、語尾や濁音、半濁音が強すぎないよう、抑えるために振っていました」
自分で聞いたなかでは、ガウディが設計した未完成の教会、スペインのサグラダ・ファミリアを訪れたときの音声ガイドが印象に残っているという。「淡々とした日本語で物語性よりは説明に重点を置いて読んでいて、わかりやすかったです。静かな場所で一人で聞くものだから、感情を出しすぎると邪魔になる。難しい仕事ですね」
そうは言いながらも、台本を予習した成果を発揮して、15作品の解説を読み切った。
16日に開幕する「ルーベンス展」で、初めて音声ガイドに挑戦した長澤まさみさん=東京都内のスタジオ
絵がうまい人にあこがれた
「母が絵の上手な人で、私の顔をマンガチックに描いてそれを祖母がポーチに刺繡(ししゅう)してくれたことも。私ですか。『味がある絵だね』と言われていました……。絵のうまい人になりたいという夢がありました」
ペーテル・パウル・ルーベンス「クララ・セレーナ・ルーベンスの肖像」ウィーン、リヒテンシュタイン侯爵家コレクション(C)LIECHTENSTEIN. The Princely Collections,Vaduz-Vienna
そんな長澤さんが出展作品で気になるというのは、娘を描いた「クララ・セレーナ・ルーベンスの肖像」。「売れっ子の画家で忙しいのに、大作を描く合間に楽しんで娘を描いた。絵も家族も、本当に好きだったんだろうなと、ルーベンスさんの温かい人柄を感じます」
ほかに「エリクトニオスを発見するケクロプス」を挙げる。「クララもそうですが、肌の質感が見事でみずみずしい」と感心する。
ペーテル・パウル・ルーベンス 「エリクトニオスを発見するケクロプスの娘たち」1615~16年、リヒテンシュタイン侯爵家コレクション(C)LIECHTENSTEIN. The Princely Collections, Vaduz-Vienna
長澤さんはまた、ルーベンスが規則正しい生活を送って散歩に出かけ、家族そろっての夕食を楽しんだというエピソードにも注目した。「規則正しいサラリーマンの生活に憧れがあるので。苦悩して精神を壊す芸術家が多いなか、自分の精神と向き合う生活を送れた人。作品からは明るい印象を受けるので、絵が苦手という人でも、見て楽しいと思います。40作品も集まるので期待も高まります」と話した。
16日に開幕する「ルーベンス展」で、初めて音声ガイドに挑戦した長澤まさみさん=東京都内のスタジオ
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展覧会は、10月16日[火]~2019年1月20日[日]、東京・上野の国立西洋美術館。午前9時30分~午後5時30分。金・土曜は午後8時まで。11月17日は午後5時30分まで。月曜休館(12月24日、1月14日は開館)。12月28日~19年1月1、15日休館。一般1600円、大学生1200円、高校生800円、中学生以下無料。音声ガイドの貸出料金は550円。問い合わせは、ハローダイヤル(03・5777・8600、朝日新聞社など主催)(曺喜郁)