上野の東京都美術館で開催中の「没後50年 藤田嗣治展」(朝日新聞社など主催)。過去最大級の回顧展を、朝日新聞に連載中の4コママンガ「地球防衛家の人々」などでおなじみの、しりあがり寿さんが訪れた。会場を巡ったしりあがりさんは「渡仏して成功し、帰国して戦争も描き、またフランスに戻った。世界レベルに挑戦した稀有(けう)な画家の一生の軌跡が見られる、いい展覧会ですね」と感想を述べた。
藤田嗣治(1886~1968)について「おかっぱ頭とひげの変な人という印象で、若い頃は深い関心はなかったですね」。
会場の最初の絵は東京美術学校の卒業制作として描いた「自画像」(1910年)。「いやあ、すごい出来栄えですね。卒業制作とは思えない。上から目線の表情も自信たっぷり。これがどう変わっていくのか、たどっていくのも楽しみです」
藤田は26歳で渡仏する。エコール・ド・パリの売れっ子になる過程の作品群を追った。「ぼくも若いとき、フランスで勝負しようと、日本らしいものと思って墨絵を持っていったんだけど、日本といえばアニメだろうと言われて、受け入れられなかった。藤田は『乳白色』で戦うんだよね」
乳白色の質感にうなる
華やかな色彩があふれたフランス画壇に対し、藤田はモノトーンの「乳白色の裸婦」シリーズで人気を得る。
一連の作品に、しりあがりさんは「ただの白じゃないね。色がない分、質感の情報量が多いね。印刷だと分からないね」とうなった。
「舞踏会の前」(25年)の中央に描かれる裸婦の瞳にも注目した。「目に星を入れないから、表情を読ませないでしょ。ヒットマンガ『ゴールデンカムイ』でも同じ手法が使われていますよ」
藤田は1931~33年、中南…