内戦が続くシリアで、反体制派の唯一の大規模支配地になっている北西部イドリブ県に設ける予定の非武装地帯が、15日に設置期限を迎えた。アサド政権軍による総攻撃を避ける狙いだったが、設置の条件である同地域の過激派組織の撤収は実現していない。政権軍が「合意が破られた」として総攻撃に踏み切る恐れがあり、予断を許さない状況になっている。
イドリブ県は劣勢にある反体制派の最後の大規模拠点で、約300万人が暮らす。アサド政権軍が総攻撃に踏み切れば、多数の死傷者と難民・避難民が出ることが懸念されている。
非武装地帯の設置は、アサド政権軍の後ろ盾となっているロシアと、イドリブ県の反体制派を支援するトルコの間で合意していた。政権軍と反体制派の支配地域の間に設けられ、幅15~20キロ。ロシア軍とトルコ軍がパトロールし、政権軍と反体制派の衝突を防ぐことになっている。
ただ、設置予定地域では「シャーム解放委員会」(旧ヌスラ戦線)などの過激派組織も活動している。ロシアはトルコとの合意に際して、過激派組織の排除を非武装地帯の設置の条件にしていた。
反体制派の在英NGO「シリア人権監視団」によると、過激派組織は15日午後時点も撤収していない。旧ヌスラ戦線は14日、「我々は革命を達成するために、聖戦と戦闘を放棄しない」とする声明を出した。
アサド政権のムアレム外相は15日、「合意が守られないなら、政権軍はテロ組織を抹殺する準備ができている」と述べ、過激派組織が撤収しなければ、イドリブ県への攻撃に踏み切る可能性を示唆した。一方で、「ロシアの反応を待っている」とも語り、ロシアと協議して対応するとみられる。(イスタンブール=其山史晃)