日仏で活躍した洋画家・藤田嗣治(つぐはる、1886~1968)が昭和初期、ブラジル産コーヒーの宣伝のための壁画を東京・銀座のビル内に描いていた。行方不明になっている部分を含めた壁画の全体像など、当時の様子を伝える展示が東京・青山のブラジル大使館で無料公開されている。
藤田嗣治展、京都で開幕 乳白色の裸婦像など120点
ブラジルの雄大な風景や労働者の姿を描いた「大地」。藤田が残した記述では横約18メートル、縦約3・6メートルとされる。1931年から2年間、中南米を旅した藤田が、帰国後に最初に手がけた作品だった。
ブラジル大使館によると、同国は当時、輸出額の半分を占めるコーヒーを広く売り込むため、世界中に直営のショールームを設けていた。コーヒー消費が急拡大していた日本には34年、東京・銀座4丁目の聖書館ビル(アントニン・レーモンド設計)に開かれた。藤田の壁画は、前年に完工したばかりのモダンな建物を飾った。
だが38年に始まった貿易統制…